あだち充:作品の“間”のこだわり明かす 日高のり子も「読むのは最高。演じるのは大変」

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 「タッチ」などで知られるマンガ家のあだち充さんの画業55周年を記念した展示会「ー画業55周年記念ー あだち充展」が、12月19日からサンシャインシティ 展示ホールC(東京都豊島区)で開催されることを受け、あだちさんと、アニメ「タッチ」の浅倉南の声優で、同展の音声ガイドナビゲーターを務めた日高のり子さんによるスペシャル対談が18日に行われた。あだちさんは、作品を描く上で、キャラクターが多くを語らない、“間”の表現についてこだわりを語った。

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 あだちさんは、“間”について「意識してそのへんはやっていたと思います。言葉にしちゃうと意味を持ってしまう。ニュアンスや裏の感情を何とか言葉にしないで伝えるのが好きだったので、やっていました。それを成立させるためには、相手に気持ちを察する力がないと話が進んでいかない。主人公の周りには、とても高校生のとは思えない大人っぽいキャラクター、物わかりがいい、ちゃんと裏をくんでくれる脇役を配して、何とか続けて参りました」と語った。

 日高さんも、あだちさんの作品を読む際は「セリフのない風景のシーンで私はいろいろなことを考えます」と話し、「その時間があるからよりストーリーに没入できる。読んでいるだけなのに、自分も登場人物を脇から見ているような、その感覚が大好きです」と語った。

 ただ、あだちさんの作品のキャラクターを演じるとなると、難しさがあるといい、「私は『タッチ』という作品で声で表わすことになりました。先生がおっしゃった言葉にしない本当の思い。本当の思いは別のところにあるのに、このセリフを言う、声で表現するということで、(収録では)本当に何度もダメを食らって、録(と)り直しがいっぱいあって。読む時には最高なんだけど、演じるほうは大変だなと思った記憶があります」と語った。収録中は「ずっとみけんにしわが寄りっぱなし」だったといい、「今もしわが残っているのは先生のせいですよ!」と“苦情”を言うと、あだちさんは苦笑いしていた。

 あだちさんは当時の「タッチ」人気について、「本人は気にしていないし、どこが受けているのか分からなかったし、分析するとなおさら分からなくなっちゃうので、気にしないで描いていました。でも、アニメになってからは、アニメではできないような表現方法をして、その辺はケンカを売るようにやっていました」と振り返った。

 「ー画業55周年記念ー あだち充展」は、初公開となる原画を含む、秘蔵の生原画を40点以上展示するほか、作品のラフスケッチなど貴重資料が並び、総展示数は300点を超える過去最大規模の展示会となる。2026年1月14日まで。

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