プレスリリース詳細 https://kyodonewsprwire.jp/release/202603266394
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「運動ニューロン疾患に対する新規治療法の確立」へ
2026年3月27日
岐阜薬科大学
岐阜大学
名古屋大学
協調運動の発達にはアミノ酸シグナルが重要! -「運動ニューロン疾患に対する新規治療法の確立」へ-
岐阜薬科大学薬理学研究室の貞盛耕生 大学院生/SPRINGスカラシップ研究学生,岐阜薬科大学薬理学研究室・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科・岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)の檜井栄一教授,名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学の勝野雅央教授らの研究グループは,金沢医科大学の石垣靖人教授らとの共同研究により,アミノ酸シグナルが“新生児期の協調運動の発達”に重要な役割を担っていることを発見しました。
栄養素の一つであるアミノ酸は,タンパク質合成の材料としての受動的な働きだけではなく,シグナル伝達分子として能動的に働いています。これまでに,分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度の異常と,自閉症や認知機能障害などの様々な神経疾患の発症との関係性が報告されています。BCAAは必須アミノ酸であり,アミノ酸トランスポーター(※1)を介した神経細胞への適切な供給が中枢神経系の恒常性維持に必須です。しかしながら,どのようなトランスポーターがどのように関与しているのかに関しては,これまで明らかになっていませんでした。
本研究では,神経細胞のアミノ酸トランスポーターL-type amino acid transporter 1(LAT1)(遺伝子名:Slc7a5)(※2)の不活化が,新生児期の脊髄運動ニューロン(※3)の変性と神経筋接合部(※4)の機能不全,およびそれらに伴う協調運動(※5)障害を引き起こすことを発見し,LAT1が運動ニューロンへのアミノ酸供給と協調運動能の形成に重要な役割を担っていることを明らかにしました。本研究成果は,神経細胞のアミノ酸トランスポーターを標的とした運動ニューロン疾患に対する新規治療・診断法の開発に貢献することが期待されます。
本研究成果は,米国学術雑誌『Cell Death & Disease』に掲載されました(オンライン版公開日:日本時間2026年3月24日)。
本研究のポイント
・BCAA濃度異常と様々な神経疾患発症との関係性が報告されています。
・神経細胞のLAT1の働きを抑えると,下位運動ニューロン病様の症状が誘発されることを発見しました。
・神経細胞のLAT1の働きを抑えると,脊髄運動ニューロンの変性と神経筋接合部の発達不全が引き起こされることを見出しました。
・下位運動ニューロン病モデルマウスの運動ニューロンでは,LAT1発現とアミノ酸シグナル活性の低下が観察されました。
・LAT1を介した運動ニューロンへの適切なアミノ酸供給は,運動ニューロンの生存および協調運動の発達に重要であることが明らかになりました。
・以上の成果により,神経細胞のLAT1が運動ニューロン疾患に対する新規治療・診断標的となる可能性が期待されます。
研究成果の概要
栄養素の一つであるアミノ酸は,タンパク質合成の材料としての受動的な働きだけではなく,シグナル伝達分子として能動的に働いています。アミノ酸シグナルの開始にはアミノ酸トランスポーターを介したアミノ酸の細胞内流入が欠かせません。LAT1は,ロイシンやイソロイシンなどのBCAAを細胞内へ輸送するアミノ酸トランスポーターです。
研究グループはこれまでに,脳視床下部の神経細胞のLAT1が全身エネルギー代謝調節に重要な役割を果たしていること(Park et al., JCI insight 2023),神経細胞のLAT1がストレス刺激により誘導されることを見出してきました(Onishi et al., FEBS Open Bio 2019)。
これまでに,BCAA濃度が異常値(高値・低値)を示すと,自閉症や認知機能障害,あるいは運動協調性異常などの様々な神経疾患が引き起こされることが報告されています。BCAAは必須アミノ酸であり,アミノ酸トランスポーターを介した神経細胞への適切な供給が中枢神経系の恒常性維持に必須です。しかしながら,どのようなトランスポーターが関与しているのか,そして,そのトランスポーターが中枢神経系の恒常性維持にどのように働いているかに関しては,これまで明らかになっていませんでした。
研究グループはまず,神経細胞特異的にLAT1を欠損させたマウス(以下,LAT1不活化マウス)を作製しました。作製した遺伝子改変マウスを観察したところ,生後21日目までに全個体が死亡することがわかりました(図1A)。さらに,様々な行動解析試験を実施した結果,LAT1不活化マウスは,生後14日目にFoot clasping reflexを含む,下位運動ニューロン病様の症状を呈することがわかりました(図1B)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603266394-O1-2Hf8ArJv】
図1 LAT1不活化マウスでは,新生児期致死と下位運動ニューロン病様症状を呈する。
次に,「なぜ神経細胞の LAT1 の不活化により協調運動障害が誘発されるのか?」を明らかにするために,脳・脊髄と骨格筋の組織学的な解析を行いました。その結果, LAT1 不活化マウスでは,脳内には顕著な異常は観察されないものの , 脊髄の運動ニューロンの減少と細胞死の亢進 (図2A) ,および神経筋接合部の機能不全 (図2B) が観察されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603266394-O2-P4m1f7L6】
図2 LAT1不活化マウスでは,脊髄運動ニューロンの変性と神経筋接合部の機能不全が誘発される。
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)は,脊髄内の重要な神経細胞である運動ニューロンの脱落によって,脳から筋肉への信号が伝わらなくなり,徐々に筋力の低下や萎縮が起こる下位運動ニューロン病の1つです。研究グループは最後に,バイオインフォマティクス解析(※6)を用いて,「アミノ酸シグナルと下位運動ニューロン病との関係性」を明らかにすることを試みました。その結果,SMAモデルマウスの運動ニューロンでは,LAT1の遺伝子発現量とアミノ酸シグナル活性の低下が認められました(図3A-3B)。
本研究成果より, アミノ酸トランスポーターLAT1は新生児期の脊髄運動ニューロンの成熟・維持および協調運動能の形成に必要不可欠 であることが明らかとなりました (図4) 。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603266394-O3-9fCsaZwV】
図3 SMAモデルマウスの運動ニューロンでは,LAT1の遺伝子発現量とアミノ酸シグナル活性が低下している。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603266394-O4-Lg8494iI】
図4 本研究成果のまとめ:神経細胞のアミノ酸トランスポーターLAT1は,脊髄運動ニューロンへのアミノ酸供給と協調運動能の発達に必要不可欠である。
研究成果の意義・今後の展開
本研究では最初に,細胞特異的遺伝子改変マウスを用いた遺伝学的・組織学的解析により,アミノ酸トランスポーターLAT1が運動ニューロンへのアミノ酸供給と協調運動能の形成に重要な役割を担っていることを明らかにしました。さらに,下位運動ニューロン病モデルマウスのバイオインフォマティクス解析により,アミノ酸シグナルと運動協調障害との関係性を見出しました。
以上の成果は,「アミノ酸シグナル=協調運動能の形成に必須」という新たな知見を付与するとともに,本成果を展開することで,SMAだけでなく,様々な運動ニューロン疾患に対する新規治療・診断法を提供し,アンメット・メディカル・ニーズ(※7)の解消に貢献することが期待されます。さらに本成果は,「栄養素と協調運動」について新たなエビデンスを提供し,予防オプションとしての協調運動障害に対する栄養学的アプローチ(≒医食同源)に繋がることが期待されます。
用語解説
※1 アミノ酸トランスポーター
細胞膜上に存在するタンパク質の一種。細胞内外のアミノ酸を輸送する働きを有する。
※2 L-type amino acid transporter 1 (LAT1)
LATと呼ばれるアミノ酸トランスポーターの一つ。LAT遺伝子の1番目。
※3 運動ニューロン
脳や脊髄から骨格筋へ運動指令を伝える神経細胞の一種。
※4 神経筋接合部
運動ニューロンと骨格筋をつなぐ領域。
※5 協調運動
歩行動作や食事などの日常生活に必要な一連の動作を行う運動機能。
※6 バイオインフォマティクス
生命科学と情報科学の融合分野。生命がもつ「情報」を基に,生命現象を解き明かそうとする学問。
※7 アンメット・メディカルニーズ
未だ有効な治療方法が確立されていない疾患に対する医療への要望。
掲載論文
雑誌名:Cell Death & Disease
論文名:The amino acid transporter LAT1 coordinates proper motor function at the perinatal stage
(アミノ酸トランスポーターLAT1は,新生児期の協調運動能の形成に重要である)
著者名:Koki Sadamori, Minami Hiraiwa, Tetsuhiro Horie, Kazuya Tokumura, Kazuya Fukasawa, Kentaro Sahashi, Soji Hayashida, Takuya Kubo, Makoto Yoshimoto, Shohei Tsuji, Yasuhito Ishigaki, Masahisa Katsuno, Eiichi Hinoi.
貞盛耕生,平岩茉奈美,堀江哲寛,徳村和也, 深澤和也, 佐橋健太郎, 林田爽慈, 久保拓也, 吉本誠, 辻翔平, 石垣靖人, 勝野雅央, 檜井栄一
DOI:10.1038/s41419-026-08663-8
本研究は,日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究B(一般)(檜井栄一)やJST次世代研究者挑戦的研究プログラムJPMJSP2142(貞盛耕生)などの支援を受けて行ったものです。
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