「アリス・イン・ワンダーランド」が大ヒット中のティム・バートン監督が、「これまでの人生で見た映像の中で、最高の11分間だった」という作品がある。05年の米アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた、シェーン・アッカー監督の「9」だ。その作品に心奪われたバートン監督はすぐさま長編化を決意、プロデューサーを買って出た。そして、アッカー監督自身が5年の歳月をかけて完成させたのがこの「9<ナイン>~9番目の奇妙な人形」だ。
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人類滅亡後の未来、古びた研究室で、麻の布を縫い合わせて作られた人形が目を覚ます。背中に「9」と書かれたその人形は、どういう理由で作られたのか? そもそもなぜ、人類は滅びたのか? その謎が、80分の作品の中で解き明かされていく。
独創的でクールだ。米国のアニメーションらしからぬ、陰鬱(いんうつ)で、だがふくよかな映像世界が画面いっぱいに広がる。アッカー監督は、UCLAの卒業制作として完成させた短編「9」をストップモーションアニメ(物体を少しずつ動かし、それをカメラで撮影することで連続の動きを表現するアニメ技術の一種)で表現したいと考えていたらしい。しかし、学生だった当時の彼にとっては、その手法は手間がかかる上に「(製作費が)高くて手が出ない」。その結果、2D(二次元)アニメーションという形になったわけだが、その映像は驚くほど立体的で奥行きを感じさせるものに仕上がった。
タイトルロールになった勇敢な「9」のほかに、8体の人形が姿を見せる。好奇心旺盛な双子の3と4、小心者のエンジニアの5、自立心旺盛な女戦士の7など、それぞれに愛嬌(あいきょう)があるキャラクターが見る者を魅了する。
短編では声を持たなかった人形は、今作ではセリフをしゃべる。「9」役のイライジャ・ウッドさんをはじめ、ジェニファー・コネリーさんやクリストファー・プラマーさんなど一流の俳優人が、人形たちに命を吹き込んだ。8日から恵比寿ガーデンシネマ(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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