注目映画紹介:「ソウル・パワー」 34年間お蔵入りだった音楽祭の映像を1本の映画に

「ソウル・パワー」の一場面
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「ソウル・パワー」の一場面

 34年間もお蔵入りになっていた音楽祭の映像がよみがえり、1本の映画になった。その音楽祭とは、ジェームス・ブラウン(JB)、B.B.キングらアメリカの著名アーティストがザイール(現コンゴ民主共和国)のキンシャサで一堂に会して開いたコンサート「ザイール’74」。ドキュメンタリー作「モハメド・アリ かけがえのない日々」の編集者に雇われたジェフリー・レヴィ・ヒント監督がたまたま倉庫にあった記録映像を見てみたら「ザイール’74」の膨大な記録映像だった。それをまとめた映画「ソウル・パワー」が全国で順次公開中だ。

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 ヒント監督は「サーティーン あの頃欲しかった愛のこと」(03年)や「しあわせの法則」(02年)などの映画プロデュースで知られる人物。記録映像は「ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター」などの撮影で知られるカメラマン、ケビン・キーティングさんやアルバート・メイズルスさんらが撮影している。

 「ザイール’74」は、モハメド・アリ対ジョージ・フォアマンが対戦し、アリが奇跡的な復活を遂げて話題となった“キンシャサの奇跡”と呼ばれるボクシングの試合の前に行われた伝説のコンサート。音楽祭を作り上げていく過程と、アリのインタビュー映像をはさみ込み、コンサートのシーンをかなり短く編集してある。93分は短すぎる! もう少しライブを見てみたいという気もしたが……。

 タイトルはJBのヒット曲から取った。小学生を対象にした「えいごでしゃべらないとJr.(ジュニア)」(NHK教育)でも曲が紹介されるJBだが、この映画は彼を中心に編集されているので、ソウルミュージック初心者にもわかりやすい。

 音楽が個人的に楽しむ趣味ではなく、社会と密接にかかわっていた時代の空気と、黒人アーティストたちの生き生きとした姿は新鮮に感じる。キンシャサの街で撮られた一般市民も印象的だ。

 アフリカの脱植民地化の時代の60年代、アメリカでキング牧師が凶弾に倒れたのが68年。74年当時は、すでにブラックパワーの時代はピークを過ぎていたと思える。その後にヒップホップが流行することも知らなかった時代。21世紀になって、ようやく日の目をみたフィルムは、懐かしいアルバムを開いたようにまぶしい。12日から、シネセゾン渋谷(東京都渋谷区)、吉祥寺バウスシアター(東京都武蔵野市)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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