はじめの1巻:「ミル」 化けネコと大学生の共同生活 女子高生の中身はおばあさん

手原和憲さんが「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載している「ミル」(小学館)1巻の表紙
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手原和憲さんが「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載している「ミル」(小学館)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦め作品を紹介する「はじめの1巻」。今回は、手原和憲さんが「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載している「ミル」(550円)です。

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 1人暮らしをしていた大学生・アキの元に、見知らぬ少女が風呂敷を持って押しかけてきた。少女の正体は実家にいた86歳の化けネコ「ミル」だった。見た目は女子高生だが、演歌を歌い、煮物を作る腕前は抜群で、油断するとネコの仕草が出るミルにアキは振り回されるが、その暮らしにまんざらでもない……というストーリーだ。

 ◇編集部からのメッセージ ビッグコミックスピリッツ編集部 白石幹人さん 「二人の関係は祖母と孫」

 「女子高生に化けた猫がオレの下宿にやってきて同棲(どうせい)生活」と聞くと、「何その都合よすぎる展開!?」とツッコミが入りそうですが、さにあらず。彼女の正体は、「実家で飼っているネコ」で、しかも「86歳」。つまり、見た目は女子高生でも、中身は完全な大正生まれ。……ってことはですよ、ふたりの関係は「ペットと飼い主」でありながら、その実、完全に「おばあちゃんと孫」だったりするのです。

 あくまで大学生の日常生活をメーンにしたドタバタを描きながらも、ふとしたおりにかいま見える、本来言葉では確認することのできない「ペットの思い」と「飼い主の思い」についつい涙腺崩壊……!

 作者の手原和憲氏は26歳。新人賞の受賞作品でもある「ミル」でそのまま「月刊!スピリッツ」誌の連載を勝ち取った、気鋭の新人マンガ家さんです。

 猫でおばあちゃんで女子高生で……と、ひと粒で何度もおいしいマトリョーシカのようなこの作品。自分で言うのもなんですが、“掘り出し物”だと思います。ぜひ一度、お手に取ってみてください!

 ◇書店員の推薦文 鹿児島・ひょうたん書店の筒口征洋さん 「不思議な関係に静かな感動覚える」

 予想外の面白さに、すっかりお気に入りになりました。ミルの起こす騒動にクスクス笑いつつも、徐々に描かれるアキとの絆(きずな)がじんわりと優しく心地良いですね。孤独を背負ってきたミルと、彼女を理解し受け入れるアキ。寄り添いあう二人の姿は友人や恋人、家族といったつながりのどれとも異なり、それでいて美しい。絶妙なバランスを保つ不思議な関係に静かな感動を覚えるほど。あったかくて、切なくて、にぎやかなギャグもいっぱいで、この素敵な日々を笑顔でずっと見守っていたくなる作品です。

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