注目映画紹介:「インセプション」夢からさめたときの虚脱感を体感 人間の複雑さを思い知る

「インセプション」の一場面。(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
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「インセプション」の一場面。(C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 渡辺謙さんがレオナルド・ディカプリオさんと共演し、日本で撮影が行われるなどかねてから話題の「インセプション」が23日に全国で公開される。「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン監督がメガホンをとり、脚本も担当した。

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 他人の睡眠中にその潜在意識に入り込みアイデアを盗み出す犯罪のスペシャリスト、コブ(ディカプリオさん)は、日本人のサイトー(渡辺さん)から特別な依頼を受ける。コブは、パートナーのアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィットさん)とメンバーを集め、ミッションに挑むことにするが……。

 タイトルの「インセプション」とは、「発端」とか「開始」を意味し、ここでは「植え付ける」という意味で使われている。他人の潜在意識に何を植え付けるのか……それは本編を見ていただくとして、とにかく、ここで展開するストーリーは壮大で、おそらく見た人の多くは口をそろえてこう感想を述べるだろう。「面白かった。でも、内容をうまく説明できない」と。

 摩天楼群が、人形の家を片付けるように突然たたまれたり、それまで地面を歩いていた人間が急に“角度転換”し壁づたいに歩いたりと、観客の平衡感覚を失わせる映像の数々。そこに身を委ねることで得られる不思議な感覚。夢を扱ったほかの作品と異なるのは、幾重にも折り重なった夢の中を深く深くもぐって行くところにある。それによって、人間の心がいかに複雑極まりないものかを改めて思い知ると同時に、私たちが実際に夢からさめたときに味わう虚脱感をスクリーンの前で体感させてくれるのだ。この映画をあのフロイトが見たらなんとコメントしただろう。ノーラン監督は、過去の作品「メメント」では数分と記憶がもたない男を、「インソムニア」では不眠症に悩まされる警察官を扱っていたが、よほど眠りとか意識や記憶などに興味があるのだろう。

 ノーラン監督の作品には「バットマン ビギンズ」に次ぐ出演となる渡辺さん。出番が少なかった前作に対して今作では、ディカプリオさん相手に複雑な役をこなし、演技力と懐の深さを見せつける。共演に、07年度米アカデミー賞主演女優賞に輝いた「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤールさん、同年のアカデミー賞主演女優賞候補に挙がった「JUNO/ジュノ」のエレン・ペイジさんら。23日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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