注目映画紹介:「東京島」 木村多江がめずらしく肉食系 1人の女と23人の男がサバイバル

映画「東京島」の一場面。(C)2010「東京島」フィルムパートナーズ
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映画「東京島」の一場面。(C)2010「東京島」フィルムパートナーズ

 無人島で1人の女と23人の男がサバイバルを繰り広げる「東京島」(篠崎誠監督)が28日に公開される。 主演は、いま最も輝いている女優の一人、木村多江さん(39)。薄幸そうな役が多いが、今回はめずらしく肉食系の役どころ。女性の美しさとしたたかさを、まざまざと見せ付けている。

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 原作は桐野夏生さんのベストセラー小説。ドラマ「めだか」(04年)や「鹿男あをによし」(08年)などの数々のヒットドラマを書いてきた相沢友子さんが脚本を手掛けた。結婚記念日に、船で旅に出た夫婦が遭難。無人島に流れ着いた。妻の清子(木村さん)は、生きていくためにヘビの皮をはいだりもするが、夫・隆(鶴見辰吾さん)は島の生活で何の役にも立っていない。ある日、16人のフリーターたちが島に漂着。密航に失敗した中国人6人も流れ着いた。彼らは「東京島」と名づけたこの島で、コミュニティーを作って生活し始める。夫の隆が謎の死を遂げた後、清子は女王のように島に君臨する……。

 社会から断絶された場所で生き抜くためには、人はどうするのだろうか。平和に暮らす日本人の若者に対して、中国人グループはとにかく脱出を試みようとする。日本人はひょろひょろ体形の俳優を集めているためか、中国人は肉体的にも頑強そうで、視覚的な差も面白い。その両者を行ったり来たりする清子こそ、島では最強のサバイバル能力の持ち主なのだが、清子には、女性の持つ良い面やずる賢い面などさまざまな姿が投影されている。男ばかりの中に紅一点。ちやほやされていい気になって、自分の都合でしょっちゅう小さなうそをつく。それも、生きるための能力だといわんばかりに……。

 木村さんは食べっぷりからして潔い。髪はボサボサでほぼノーメーク。だが、その表情の美しいこと! 派手な色調のエルメスのスカーフが清子の強さを強調し、次第に母性に目覚めていくさまを、じっくりと演じている。28日から新宿バルト9(東京都新宿区)、恵比寿ガーデンシネマ(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル) 

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