1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「フェローズ」（エンターブレイン）で連載、謎の化学教師の手で、1人の女の子が2人に分裂し、どちらがより相手を「好き」になれるかを競う……という八十八良さんの「ウワガキ」（651円）です。

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　平凡な高校生のアジオは同級生の千秋に告白したが、既に大学生の彼がいることが判明。ところが謎の化学教師・山田が千秋を分裂させてしまう。大学生と恋愛中の本物の千秋と、アジオとの愛をはぐくむコピーの千秋が競争し、最終的に「好き」な気持ちが強い側の記憶が、弱い側の記憶に「上書き」する……という。不思議な四角関係の結末は？

　◇編集部からのメッセージ　フェローズ編集部　森岡夏世さん　「千秋らの懸命な姿も必見」

　「女の子が分裂しちゃう話をやりたい！」−−八十八さんのこのひと言から「ウワガキ」は始まりました。

　成年誌で活躍していた八十八良さんは、フェローズ創刊号が青年誌初登場でした。短期集中連載が好評のうちに終わり、次は長編を……という話をしていたら、第一声で冒頭の「女の子が分裂」。「この人とんでもないこと言い出した！」と思いました。が、「それで！？」と引き込まれてしまったのだからもうやるしかない。このワクワク感を第1話からタップリ詰め込んであります。

　そして、そのとんでもない設定の中で、けなげにがんばる登場人物たち（涙）。アジオ、千秋（チアキ）、千秋のコピー人間・小秋（コアキ）は皆、今時の高校生ではありますが、空回り、失敗しながら前に進み続けます。彼らの懸命な姿も必見！

　体育祭でなぜかカバディをしたり、ギョーザのテーマパークでデートしたり、1話ごとにしめる部分も忘れていないSFコメディー「ウワガキ」。今後もご注目ください！

　◇書店員の推薦文　まんが王八王子店　渡邉泰弘さん　「ヒロイン分裂の“荒業”で納得の内容に」

　「彼氏が居るから」という理由でヒロインにフラれてしまった主人公が、もし彼氏がいなかった場合にヒロインに告白をしていたら……。そんなifの世界が「ヒロインを分裂させる」という“荒業”で納得の内容にしてしまった。著者のストーリーテラーっぷりがさえわたる現代SFラブストーリーです。シリアスな展開で描かれる主人公と2人のヒロインの恋愛、コメディーチックに描かれた日常描写との対比がすばらしく、同一人物ならではの「恋の駆け引き」が繰り広げられており、「千秋」と「小秋」の恋愛バトルの行方から目が離せません。上質の恋愛物語を堪能していただけたら幸いです。