1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「クッキー」(集英社)で連載、おしゃまでしたたか、でもなぜか憎めない……というちょっと太めの女の子の日常を描いたかわかみじゅんこさんの「日曜日はマルシェでボンボン」(1000円)です。
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南仏在住の女の子・ジュリエッタは、実に「きまぐれでしたたか」と、早くも「フランス女」の素養を発揮。ハンサムな男の子の言葉を聞いて急にダイエットを始めたり、ヒッピーに影響されてファッションを変えて親に“説教”したり、周囲はその気ままな行動に振り回される。一方で家族とのパリ旅行では、過密スケジュールで寝過ごした親を置き去りにして、ちゃっかり一人で楽しんだり……とつかみどころのないユーモアあふれる物語が展開される。
シュールで繊細なストーリーマンガと、軽妙で独特のリズムのあるエッセー。かわかみじゅんこさんの作品は前者と後者とで大きな振り幅があって、その振り幅の間で何かできないものかと、面識もないうちから考え、なんとかご一緒にお仕事をしたいと願っておりました。それが、この「日曜日はマルシェでボンボン」でかないました。
しなやかな質感の素材に美しい細工を施したこの世には存在しないお菓子のような……。甘いけれど食感はクール。後味ににごりがなく余韻は深い……。
分かりづらいですね。つまり名作だといいたいわけです。
主人公のジュリエッタは南仏在住の太めな8歳。おいしいものには目がなく美男子には翻弄(ほんろう)されるが、自尊心に従い、ロマンと友達を大事にする。
「ジュリエッタ大好き」という読者の声は、8歳にして女子であることをまっとうして生きるプチ・マドモワゼルへのあこがれなのかもしれません。日本の女子は女子として生きることに、まだ傷つくことがあるのかもしれません。
繊細でシニカルなユーモアにくるみながら、うそのないジュリエッタの言葉(名言のオンパレード)が光ります。すべての少女マンガを愛する人に読んでほしいと思います。自信をもっておすすめさせていただきます。
子供ながらにフランス女気質を背負っているおしゃまなジュリエッタですが、そこはやはり8歳。彼女が見せる幼さや優しさに癒やされ、その純粋さが時にとても切なく、涙をこらえてしまう場面もありました。しかし全体に漂う雰囲気はとてもポップ。日本の子供よりどこか大人びた子供たちが魅力的に描かれているのも、フランス在住のかわかみさんの観察眼があってこそ。カラフルな表紙やお菓子の包み紙のような遊び紙など、装丁にも愛らしさがにじみ出ていて、手元にあるだけでもうれしくなってしまう本です。
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