吉瀬美智子:「死刑台のエレベーター」で悪女役 「健康な体一つあればいい」の言葉で吹っ切れた

映画「死刑台のエレベーター」でオリジナルではジャンヌ・モローさんが演じた役に挑戦した吉瀬美智子さん
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映画「死刑台のエレベーター」でオリジナルではジャンヌ・モローさんが演じた役に挑戦した吉瀬美智子さん

 フランスの「ヌーベルバーグ(新しい波)」の鬼才、ルイ・マル監督による傑作サスペンス映画「死刑台のエレベーター」(57年)を緒方明監督が日本に設定を変えて大胆にリメークした作品で、阿部寛さん演じる愛人に夫の殺人を持ちかける悪女を演じた吉瀬美智子さん。オリジナルではジャンヌ・モローさんが演じた役をプレッシャーを感じながら挑戦したという。「常に凛(りん)とした、強い女性を表現できるように、そしていつもの作品に取り組む姿勢で演じれば、ぶれることはないと思った」と潔く役に取り組んだという吉瀬さんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−オリジナル作品はご覧になりましたか。

 オリジナルの「死刑台のエレベーター」は実は見たことがありませんでした。緒方監督からは「撮影に入る前に全てを知っている必要はない」と言われていたので、撮影前も見なかったんです。マネジャーからは「一度オリジナル作品を見てください」と言われていました。次に演じる役だということは分かっていましたが、あまり真剣に見てしまうとジャンヌ・モローの演技をまねしてしまう気がしたので、ざっと作品のテイストと雰囲気を確認した程度しか見ていませんでした。リメーク作が完成してからは、きちんと見ましたよ。

 −−出演を決めたきっかけは?

 共演するキャストの方々は豪華ですし、やはりオリジナル作品を傷つけてしまうのではという心配は強かったです。でも、監督とプロデューサーから「健康で病気をせずに現場に来てくれればいい」と言っていただけたことが一番の決め手でした。ジャンヌ・モローの役を演じていいのかというプレッシャーを感じていたのですが、その私の背中を押してくれたのが先ほどの一言でした。(監督とプロデューサーは)悩んでいたことをすごく理解してくれて、ただ健康な体一つあればいいと言って緊張を和らげてくれました。

 −−演技面でジャンヌ・モローとの共通点はありますか。

 オリジナル作品をきちんと見てしまっていたら、たとえば電話のシーンでも、仕草やそういうものをまねしてしまっていたと思います。でも、いつもの作品に取り組む姿勢で演じれば、一人の人物像としてぶれることはないと思っていました。役作りなども今回は正直あまりしていません。現場に入って監督にすべて委ねました。そのときどきの瞬間に感じたものを演じたつもりです。いろいろ考えたりもしましたが、考えすぎはあまりよくないですから。監督が導きだしてくださったので(笑い)。監督からは「(役名の)芽衣子はリアリティーのない感じがいい」と言われていました。疲れていても疲れていない芝居をしてほしいと。ですから、常に凛とした女性、強い女性というイメージは持っていました。監督がオリジナル作品と照らし合わせて、うまく方向性を運んでいただいたので、それでよかったのかなと思います。

 −−オリジナル作品との違いはどういう部分に出ていると思いますか。

 オリジナル作品は見ていませんでしたが、昔からフランス映画は見ていました。空気感が独特ですよね。どんよりしたというか……。元気とはいえない感じは私自身も好きだったので、日本でその空気感が出せたというのはすごくうれしいです。大筋のストーリーは変わりませんが、今の時代でも通じる作品になっていると思います。エレベーターが壊れることもまずなく、携帯電話もある現代で、このストーリーは大丈夫かな、と台本を読んだときは思いましたが、横浜の空気感がすごくマッチしていてよかったと思います。50年前の作品なのにすごいですよね。オリジナル作品と比べて見てもいいですし、オリジナル作品を知らなくても楽しめると思うので、いろんな見方ができると思います。

 −−共演者について、撮影中のエピソードはありますか。

 阿部さんとの撮影は、ラストシーンの一度だけでした。阿部さんを探して街をさ迷った後の撮影で、しかも、以前にドラマで結ばれない役を演じていたので、撮影で再会したときは「やっと会えた」といった感じでした(笑い)。阿部さんとは以前共演したこともあって、撮影のときはスムーズに(阿部さんが演じた役名の)時籐を愛する感じを出せました。

 北川景子さんと玉山鉄二さんも以前ご一緒したことがあったので、(カメラの)裏では、実はすごく和気あいあいとしていました。撮影では押し倒したりとかしていましたが、実は仲良しです(笑)。逆に(刑事役の)柄本明さんとは、撮影中距離を置くようにしていましたね。最後の重要なシーンを意識していたので、残念ながら今回はあまりお話しもしないように務めていました。

 −−芽衣子のように愛に翻弄される女性についてどう思いますか。

 女性ならみんな愛されたい願望は持っていると思います。そういうことを口にするかしないか、積極的に実行するかしないかは人それぞれ差があると思いますけれど、白馬の王子様に奪ってもらいたいと、どこか待っている部分があると思います。そういうことがあればいいなと思っている女性は、多いと思いますよ。私自身が待つタイプかと言われると……ケースバイケースですね(笑い)。

 <プロフィル>

 1975年2月17日、福岡県出身。ファッション誌「Domani」(小学館)など、さまざまな雑誌やCMで活躍。07年に「ライアーゲーム」(フジテレビ系)や「働きマン」(日本テレビ系)、「ジョシデカ!」(TBS系)などヒットドラマに出演し、注目を集める。 09年にはNHK大河ドラマ「天地人」、「BOSS」(フジテレビ系)にも出演した。10年5~7月にテレビ朝日系で放送した「ハガネの女」で連続ドラマ初主演。映画は09年に「白夜」のヒロイン役、09年と10年の「のだめカンタービレ最終楽章 前編/後編」、3月公開の「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」、4月公開のヨットを題材にした青春映画「海の金魚」に続いて、9日公開「死刑台のエレベーター」で主演。

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