市川由衣:「カツラ姿で電車に乗れると思うほど違和感なかった」 ドラマ「桂ちづる診察日録」主演

「女優は普段の自分がすべて生かせる仕事」と目を輝かせる市川由衣さん
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「女優は普段の自分がすべて生かせる仕事」と目を輝かせる市川由衣さん

 NHKで放送中の土曜時代劇「桂ちづる診察日録」(毎週土曜午後7時半)で、連続ドラマ初主演で初めて時代劇に挑戦した市川由衣さん。オファーが来たときには「え、私でいいんですか?」と驚いたそうだが、「役を通して女優として成長できるような作品になるように頑張ってほしい」とプロデューサーらに言われ、他の仕事を入れずに半年間みっちり準備して役に取り組んだ。「カツラも着物も思いのほか、違和感がなかった」という市川さんに、役作りや撮影中のエピソード、女優という仕事について聞いた。(細田尚子/毎日新聞デジタル)

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 市川さんは、時代劇は初めてで、最初の打ち合わせで「何からしたらいいんですか?」と質問し、「リハーサルは必ず浴衣でやるから浴衣が着られるように。普段から和服に親しんでおいてください」というアドバイスを受けるところから始まった。だが、「(演出を担当する)監督さんから、女性版“赤ひげ”のような人情味あふれる作品にしたいと言われ、(準備期間の)半年間を有効にこの作品のために使おうと思いました。自分がやるからにはいい作品にしたいというのが一番に思ったことです」と、いつも以上に気合が入ったという。

 もともと「日本舞踊を習いたいと思っていたけれど、きっかけがなかった」という市川さんは、和服を着るのも抵抗はなく、カツラやはかまを履いて演技するのは初めてだったが、「自分が想像していた以上にすぐになじんだ」という。「カツラは肩とか(こって)カチコチになるのかなとか思っていたんですけど、全然こらなかったですし、カツラをかぶっているのも忘れて家に帰りそうになったこともありました。カツラに和服のスタイルで電車に乗れると思ったくらい(笑い)」と撮影中はすっかり江戸時代の女性になり切っていた。

 和服を着てみて「他の人が浴衣とか着ているのがすごく目に付くようになりました。歩き方とか帯の結び方とか。和服を着てみて日本の文化ってすてきだなと改めて思いました。昔のお着物とか柄が結構モダンで、(ファッション的にも)とても興味深く見ています」とそれまでとは違うところに目が行くようになった。

 ドラマは、藤原緋沙子さんの時代小説「藍染袴お匙帖」シリーズが原作。1825年の江戸が舞台で、麻酔外科手術を習得し、シーボルトにも学んだ開業半年の新米蘭方医の千鶴が、牢(ろう)屋敷の女囚を担当する「牢医」となり、罪を犯した女たちの治療をし、その人生にもかかわっていく、という物語が展開する。役が決まったときに原作を読み、「人が亡くなったり、事件があったりといろんな人生の節目にかかわっていく話ですけれど、女性が主人公だからなのか、すごく温かい空気が流れている」と通底するテーマを読み取った。

 実際に江戸時代に女医は存在しなかったが、もしこの時代に女性が医療の世界に飛び込んだら、と想像して役作りをした。「男性のライバルが足を引っ張ったり、(信念を曲げなかった)同じ医師の父に対して文句をいう人もいたと思うんですけど、新聞記者をしている友人がいるので、男社会でたくましく働いている彼女のことを思い浮かべながら演じました」と役作りに役立てた。「彼女の意志の強さとか芯の強さは千鶴に通じると思いました。千鶴はきっとお兄ちゃんがダメだから医者になったんじゃなくて、父の背中を見て、父にあこがれて、ああいう人を助ける医者になりたいという思いがあったので、兄が跡を継いでいたとしても医者の道を進んでいたと思います」と力強く語った。市川さんの信念がこもった目は役の千鶴の「自分の道は自分で切り開く」という意志の強さを体現しているように見えた。

 ただ自身と千鶴が似ていない部分は「ほれっぽいところですね。私も一目ぼれはなくはないんですけど、あそこまで熱しやすく冷めやすくないですよ」と笑う。ドラマは後半を迎え、「女性が不幸な目に遭う話も多くて、千鶴はどうして女の人ばかりこんなに不幸なんだろうと考えるようになっていきます」と女性が主人公ならではの現代に通じる話が中心になっていく。その中で千鶴は「自分にできることはなんだろうと常に考えるようになります」といい、その考え方は市川さん自身も共感しながら演じることができたという。

 初主演で「君はブレないで、千鶴でいてくれ」と言われ、撮影前のプレッシャーをはねのけて、「私は千鶴でいればいいんだ」と自然体で演じることができた。「女優の仕事は定年がないし、いいことも悪いことも全部、普段の自分が生きていることを生かすことができる仕事。こんなにすべてを生かせる仕事はほかにはないと思うんです」と天職だと感じている。「これからもいろんな経験を積んで、深みのある女優になりたい」と理想を掲げた。

 次回は、休みがあると「旅行に行ったり、舞台を見たりします」というオフの過ごし方や生き方について聞いた。

 <プロフィル>

 1986年2月10日、東京都出身。スカウトされ、グラビアアイドルとして活躍後、01年にドラマ「渋谷系女子プロレス」で女優としてデビュー。03年には「呪怨」で映画に初出演し、歌手としても活動した。06年に「サイレン~FORBIDDEN SIREN」で映画初主演。代表作は映画「NANA2」(06年)など。ドラマは「4姉妹探偵団」(08年)、「RESCUE~特別高度救助隊」(09年)などにレギュラー出演。映画は「クロサギ」(08年)、「ひゃくはち~我ら補欠 夢と煩悩のかたまり~」(08年)、「罪とか罰とか」(09年)などに出演した。趣味は和太鼓で中学時代は「和太鼓部」だった。特技は水泳。身長158センチ。血液型A。NHKの土曜時代劇「桂ちづるの診察日録」は毎週土曜日午後7時半に放送。また、市川さんはWOWOWで11月21日から放送する連続ドラマW「東野圭吾『幻夜』」に定食屋の看板娘役でレギュラー出演する。

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