前回のコラムがアップされた翌日の2日、大手ゲームメーカーカプコンの常務で、有名クリエーターの稲船敬二さんが、退社した理由をゲームサイト「4Gamer.net」で明かしたことは記憶に新しい。インタビューでは、日本のゲーム会社が抱えている課題に触れていた。企画者であり、開発者であり、役員ゆえに抱えたであろうジレンマも見える。辞めるときも会社からの慰留などはなかったというが、会社という組織では、重要な役職の人もパーツに過ぎない。だから代替はあるという判断があり、会社側はその判断を受け入れ、結論に至ったのだろう。個人的には稲船さんの今後の活躍に期待したい。
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さて、ゲーム業界が、経済産業省という役所から認知されたときから、産業は右肩上がりの成長を義務付けられた。日本を代表する輸出コンテンツ。資源の無い国における重要な資産として、マンガやアニメと同様にゲームは日本の発展の一翼を担わされた。日本は島国で、地続きの大陸と異なり、かなの発明に代表されるよう歴史上独自の文化圏を構築してきた。それゆえにコンテンツ、ゲームでも独自の発展を遂げたのだろう。
しかし、四半世紀を超える歴史の中で、ゲームも様変わりしてきた。その一つが作り手側の高齢化だ。ゲーム産業がにぎやかなころ、当時ハタチそこそこだった青年たちも「アラフォー」(40歳代)になり、「アラフィフ」(50歳代)という人もいる。それは「感性が鈍る」うんぬんより、若手が台頭しない方が問題だ。個人的には、台頭できない環境にあるのではないだろうかと思っているのだが、それはまた別の話だ。
振り返ってみるとゲームコンテンツは、プレーヤーが要望を満たしているときはよかったのかもしれないが、ゲーム機のスペック向上とともに、ユーザーが求めたモノとは違う方向を目指したのではないか。プレーヤーが本当に求めたのは、面白さのエッセンスであり、クリアすることの醍醐味(だいごみ)だった気がする。だが、実際はCGの美的クオリティーや、演出に凝る方向へ向かった。その結果、育てるべきプレーヤー(=ゲームを熱心に買うメーンの顧客)は徐々に目減りし、いったんは増えたように見えた顧客も下降トレンドを描いているような気がする。
過去を振りかえってどうのこうのと言うつもりはない。演出を追求したり、カジュアルゲームの力で取りこんだから得た客層もあるわけで、過去があるから今がある。だが既に優秀な人材はネット系コンテンツに流出し、日本ゲーム界の空洞化も徐々に始まっている。そんなことを思えば外資系ゲーム会社の公開買い付け(M&A)のニュースが舞い込んできた。「盛者必衰」、まるで「ゲーム平家物語」である。いっそのこと誰かゲームにしてみたら面白いのではないだろうか。流行のソーシャルアプリでね。
著者プロフィル
くろかわ・ふみお=60年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。
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