注目映画紹介:「酔いがさめたら、うちに帰ろう」 西原さんの亡夫のアルコール依存症克服記

「酔いがさめたら、うちに帰ろう」の一場面(c)2010シグロ/バップ/ビターズ・エンド
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「酔いがさめたら、うちに帰ろう」の一場面(c)2010シグロ/バップ/ビターズ・エンド

 マンガ家・西原理恵子さんの元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣(かもしだ・ゆたか)さん(07年死去)が、アルコール依存症を克服したエピソードをユーモラスにまとめた自伝的小説の映画化「酔いがさめたら、うちに帰ろう」(東陽一監督)が4日に全国で公開された。東監督が「この2人を迎え入れたことは、監督として最高に幸せ」と評した浅野忠信さんと永作博美さんが主人公の夫婦を演じている。

ウナギノボリ

 「来週はしらふで家族と会うのです」……と言いながら、ウオッカを飲み気絶した戦場カメラマンの塚原安行(浅野さん)。そこに足早に駆けつけ「大丈夫。まだ死なないよ」と、彼のほおをさする人気マンガ家の園田由紀(永作さん)。2人は結婚し、子供にも恵まれたが、安行のアルコール依存症が原因で離婚。安行は10回の吐血、入院、暴力を繰り返し、断酒できずにいた。自身も家族も疲れ果て、安行は嫌々ながらもアルコール病棟に入院する。しかし、そこでの風変わりな入院患者たちとの生活や、個性的な医者との会話は不思議と安堵(あんど)感を与えてくれるものだった。すべてを受け入れる覚悟の元妻と、家族の深い愛情に支えられ、体力も心も次第に回復していくが、安行の体はもう一つ、大きな病気を抱えていた……というストーリー。

 ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した「絵の中のぼくの村」(96年)で知られるベテランの東陽一監督が、原作にほれ込み、脚本も担当。4年の歳月をかけて製作した。自分勝手だけど憎めない主人公を浅野さんが圧倒的な存在感で演じ切った。由紀役の永作さんは母であり、妻であることの強さと弱さ、人間的な魅力を見事に体現。主人公を見守る安行の母親役にベテラン女優の香山美子さん、由紀のアシスタント役に市川実日子さん、入院患者役に光石研さん、医者役に利重剛さんなど実力派俳優たちが脇を固めた。忌野清志郎さん(09年死去)が歌う主題歌「誇り高く生きよう」がエンディングに高らかに響く。鴨志田さんの元妻の西原理恵子さんが映画の中で使われているイラストの作画を担当したほか、精神科患者役で出演もしている。4日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)、テアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(毎日新聞デジタル)

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