マンガ質問状:「源博士の異常な××」使える脳科学知識が満載 東大や東工大の研究室へも取材

寄田みゆきさんのマンガ「源博士の異常な××」(講談社)1巻の表紙
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寄田みゆきさんのマンガ「源博士の異常な××」(講談社)1巻の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、孤独な自虐少女と、ちょっとズレた脳科学者を中心に、研究に没頭する日々をコミカルに描いた寄田みゆきさんの「源博士の異常な××」です。同作について、BE・LOVE編集部の冨澤絵美さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 所持金ゼロ。身寄りナシ。真冬の路上で死にかけていたみのりは、偶然現れた脳科学者・源義行に拾われ、成り行きで研究室秘書兼専属実験体となる。生身の女より脳が好き!! IQ200の天才変人・源博士を筆頭に、研究にすべてを注ぎ込んじゃった高学歴ワーキングプアたちに囲まれた、とびきり悲惨でとびきりハイテンションな研究室ライフとは!?

 ……というわけで、たいそう不幸な生い立ちに恵まれたヒロイン・みのりの筋金入りの自虐脳に、「脳は人を幸せにするために存在する」という仮説のもと、いろんな過激実験で挑んでゆく源博士。本作は、その暴走っぷりが見どころのマゾヒスティックコメディーです。とある書店員の方から「『GOD SAVE THE すげこまくん!』の系譜を継ぐ、王道白衣マッドサイエンティストもの」とのお言葉をいただきましたが、ビンボーだけど一生懸命研究に打ち込む個性豊かな仲間たちの掛け合いも、テンポよく楽しめます。さらに「やる気脳」「自信脳」「いじめ脳」など、読んだそばから実生活で試してみたくなる、“使える”脳科学知識が満載。前歯が乾くほど爆笑できて、ちょっぴりお役立ち、しかも意外に泣けるのでびっくり!……してみてください。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 3年程前、作者の寄田さんと話していたときのこと。「私、毎日飲んでます。やっぱり良くないですかね」「ああ、アルコールって脳細胞を壊すらしいですからね。しかも戻らない」「えー! ホントですか!? どうしよう、断酒しようかな」「でもお酒があるからこその人の幸せですよ。ストレス脳には絶対必要ですよ!」。そんなこんなで、寄田さんが脳科学に興味をお持ちでいらっしゃることが判明し、すぐさま連載の準備に入りました。当時(08年)はちょうど脳科学ブームが起こりつつあった時期でしたが、中途半端なものにはしたくないと東大や東工大の理系研究室へ取材にうかがい、満を持してのスタートとなりました。

 −−編集者として作品を担当するうえでうれしいこと、逆に大変だったエピソードを教えてください。

 メガネ×白衣×天才変人という源博士の魅力を熱烈につづってくださる女子中高生の皆様からのお声ももちろんありがたいのですが、「息子に読ませたくなった。とっても温かい気持ちになった」という受験生のお母様からのお手紙が印象的でした。

 この作品の魅力は、脳科学をテーマにしながらも、人が人を思うことの強さ、だれかの思いを受けて自ら変わろうとすることの強さを描いているところです。寄田さんは、脳科学の知識をストーリーに盛り込みながらも「ほんとはこうじゃない?」「こう考えた方が幸せじゃない?」と、寄田さんなりの解釈を加えられていて、それがとても温かい。ハッとさせられる瞬間がたくさんあります。そういった点が、読んでくださった方にも伝わっているということが、とてもうれしかったです。

 大変だったことといえば、研究室を取材した際に、大量のラットを目の当たりにしなくてはならなかったことでしょうか。寄田さんは興味津々で、喜々としてカメラを構えていらっしゃいましたが……。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 さまざまな実験を通じてどんどん変化してゆくみのり(の脳)に、ますます研究意欲をかきたてられ夢中になっていく源博士と、自虐的な脳を変えてみせる!と親身になって実験を重ねる源博士に、まるでひな鳥のように懐き、引かれてゆくみのり。はたからみれば、それはもはや恋なのですが、どうも2人はズレている。そんな、あいまいで微妙で危なっかしい関係性が今後どうなっていくのか。寄田さんならではのPOPなギャグシーンとともに、見どころをたくさんご用意しております。最新3巻は4月発売予定。どうぞご注目ください!

 BE・LOVE編集部 冨澤絵美

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