黒川文雄のサブカル黙示録:会社のアンチエイジングとは ソーシャルゲームの成長に思う

 1年の始まりです。年を経るごとにすべての生物は老化しますし、それは会社も同じです。新入社員も、いずれは中堅社員となり、定年退職していきます。会社も長短はあれ、生まれ、青春時代を謳歌(おうか)して成熟し、そして黄昏(たそがれ)を迎えていきます。しかし、会社が人と異なるのは、新しい人材や才能を迎えることで、新陳代謝が活発になることでしょう。それが良い方向に変われば、社会から評価されるようになります。

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 会社は、株式公開という公的な指数で評価されます。ゲームやコンテンツ関係の会社も評価され、その高低で現金の調達額が決まります。そして、多額の資金調達のためには、高く評価され続けることが重要です。ゲーム業界の歴史も既に30年ほどに達し、成熟しました。その成熟を凌駕(りょうが)してしまったものが、ソーシャル系アプリの会社でした。会社の価値を公的評価に値する「時価総額」ですが、創業してヒトケタ台の会社にあっさりと抜き去られてしまったものがあります。

 ファミコン創世記からゲーム産業を担った会社にしてみれば……、「あれ(ソーシャルゲーム)はゲームではない」とか、「あんなものはいくつでも作れる」と強気の声も聞こえそうですが、過去の歴史を振り返ってみれば、「誰にでもできる」と言われたコンテンツが大きな市場を確立することが多々あります。

 ゲーム会社にしてみれば「まだおれは本気を出していないだけ」「いつでも巻き返せる」と思っているのかもしれませんが、それは“破格の予算”を投じて開発するゲームソフトが、「一発当たれば一気に回収できる」という既存のモデルに慣れたからかもしれません。

 以前にコラムで触れましたが、著名なクリエーター集団が大挙して辞めることで、会社が活性化した……という例があります。他では、経営不振を理由に従業員を大幅にリストラした組織もあります。人の入れ替えは組織の活性化になる側面もありますが、それが当たり前になると従業員たちが不安定な状況にさらされる結果になります。

 私自身もかつて会社経営を経験しました。しかし会社の数字やキャッシュフローの悪化を恐れて、人員を削減したことはありません。雇用におびえている従業員にお客さんの感動を呼び覚ませるコンテンツやサービスを提供できるわけがありませんから。

 会社のアンチエイジング(予防や治癒)はとても難しいものがあります。常に美しく溌剌(はつらつ)としていればいいというものではありませんし、ときにはあきらめる勇気も必要です。売り上げナンバーワンを競い合うだけのような一辺倒のアンチエイジングでなく、オンリーワンのコンテンツを提供できるような美しいアンチエイジングを目指すべきではないでしょうか。

 著者プロフィル

 くろかわ・ふみお=60年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。

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