堀北真希:高良健吾に聞く 映画「白夜行」 「現場で励まし合えないのがつらかった」

映画「白夜行」で共演した堀北真希さん(左)と高良健吾さん
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映画「白夜行」で共演した堀北真希さん(左)と高良健吾さん

 累計200万部の売り上げを誇る東野圭吾さんによるベストセラー小説を映画化した「白夜行」(深川栄洋監督)が全国で公開中だ。主役を務めるのは、映画やドラマ、舞台に引っ張りだこの堀北真希さんと高良健吾さん。原作はこれまで、連続ドラマ化や舞台化、さらに韓国では映画化もされた。それだけに今回の作品は「確実に比べられる。嫌でも意識してしまう」と高良さんは話す。堀北さんも「この作品を書いた東野さんに対して勝手にプレッシャーを感じていました」と重圧を口にした。2人に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 原作の小説「白夜行」は、70年代の大阪の廃虚ビルで起きた殺人事件から幕を開ける。事件は迷宮入りとなるが、その後、成長した被害者の息子・桐原亮司(高良さん)と、容疑者とされた女の娘・西本雪穂(堀北さん)の周辺では、不可解な事件が立て続けに起こる……という物語。映画は、事件を19年間追い続けた刑事・笹垣潤三(船越英一郎さん)を軸に、雪穂と亮司を取り巻く“黒い闇”を解き明かしていく。

 原作がある場合、役者は、自分が演じる人物の内面を文章から読み取り、役作りにも活用しようとする。だがこの「白夜行」については雪穂も、亮司も、心情を決して明らかにしていない。それについて堀北さんは「確かに、雪穂本人の心を原作から読み取るというよりは、周囲の人の彼女に対するリアクションなどで雪穂という人物が成り立っているという印象が強かった」という。それでも、堀北さんは高校生のときに原作を読んで以来、その世界観に魅せられ、「私の中には雪穂というイメージはなんとなくあった」といい、そのイメージを「できるだけ忠実に形にしたい」と思いながら演技に臨んだという。

 一方、原作を読まず台本から入った高良さんは「自分から作るというより、周囲が作ってくれた部分がたくさんあった」と役作りを振り返る。高良さん自身は当初、亮司を「淡々といろんな罪を犯していく人間」ととらえていた。ところが深川監督から、「もっと処世術にたけた人間」と注文されたという。高良さんにとって、印象に残る場面がある。同棲(どうせい)中の女性、栗原典子(粟田麗さん)に、職場から青酸カリを持ってくるようそそのかす場面だ。このとき深川監督からは、まばたきをせず、相手の目を見てせりふを言うよう指示された。高良さん自身は、まばたきをした意識はなかった。「でも、きっと僕が最初にやった芝居は『だまし』ていて、無意識にまばたきをしていたんだと思います」と振り返る。

 高良さんはもともと、「うそはつきたくない」性分だという。もちろん、芝居をすることが観客をだますことでもあることは承知している。「フィクションだし、ときには自分が言いたくないせりふを言うこともあるわけですし。それでもうそをつきたくないという思いはあります。でも今回は、日ごろそう思っている自分さえもだましている気がした」と、当時感じたジレンマを思い出していた。

 亮司を演じることは精神的にきつく、実際につら過ぎて「吐いてしまったこともある」という。その苦しみの上に成立した演技を、改めてスクリーンで見た堀北さんは「悲しみの迫力、苦しみの迫力がすごかった」といい、「観客の方々にも、亮司の心の闇や苦しみ、葛藤はすごく伝わると思います」と賛辞を惜しまない。

 2人とも、映画やドラマ、舞台出演が続く。「本当は、一つ一つの作品に集中できるのが理想的です」と堀北さんは明かす。でもそんなことは、引く手あまたの2人には不可能だ。今回の撮影中も、高良さんは映画「ボックス!」のキャンペーンで地方を回り、堀北さんも、映画「大奥」の撮影と重なった。何日か現場に通って何かをつかめたと思っても、翌日には次の現場に行かなければならない日々。堀北さんは「それまで積み上げてきたものがリセットされてしまう。それがつらいところではありました」と苦労を認める。

 また、雪穂と亮司が劇中、顔を合わせるシーンがほとんどないため、現場で一緒にいる時間が少なかったことも、演じることを一層難しくさせた。堀北さんは「自分が現場でつらいときは、高良くんもつらいだろなと思っていました。励まし合えないのがつらかった」という。それでも、堀北さんにとって雪穂という役を演じることは「努力をするという感じではなかった気がする」。そして、「精神的につらいことはありましたが、自分がやりたくてそこにいたわけだから、逆に気持ちがいいというか、楽しかったです」と満足そうな表情を浮かべた。

 堀北さんはラストシーンについて「いま同じことをやってくださいといわれても、たぶんできない」と打ち明ける。深川監督とは撮影直前まで話し合い、最後には「とにかくやってみないと分からないという結論になった」という。そして本番……。「それまで自分の中に蓄積されたものが、瞬発力と、ものすごい集中力によって生まれたシーンでした。とても貴重なシーンになったと自分では思っています」。そう胸を張る堀北さんと、その言葉に隣でうなずく高良さん。2人からは、作品に対する自信が伝わってきた。

 <堀北真希さんのプロフィル>

 1988年10月6日、東京都出身。03年「COSMIC RESCUE」で映画デビュー。05年、ドラマ「野ブタ。をプロデュース」で注目され、同年の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」では日本アカデミー賞新人俳優賞を受けた。「特上カバチ!!」をはじめドラマ、映画、CMで活躍。昨年末には初舞台「ジャンヌ・ダルク」で主役を演じた。他のおもな映画出演作に「誰かが私にキスをした」「大奥」(ともに10年)など。「これでいいのだ!! 映画☆赤塚不二夫」(佐藤英明監督)がゴールデンウイークに公開を控える。

 <高良健吾さんのプロフィル>

 1987年11月12日、熊本県出身。06年の「ハリヨの夏」で映画デビュー。「M」(07年)では、第19回東京国際映画祭<日本映画・ある視点>特別賞を受賞した。他のおもな映画出演作に、「蛇にピアス」(08年)、「フィッシュストーリー」(09年)、「BANDAGE バンデイジ」「ソラニン」「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「おにいちゃんのハナビ」「ノルウェイの森」(すべて10年)など多数。11年には、映画「まほろ駅前多田便利軒」(大森立嗣監督)、映画「軽蔑」(廣木隆一監督)の公開を控える。また、1月中は舞台「時計じかけのオレンジ」に出演。3月から放送を開始するNHK連続テレビ小説「おひさま」にも出演する。第23回日刊スポーツ映画大賞石原裕次郎新人賞受賞。

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