注目映画紹介:「ヒア アフター」イーストウッド監督が描く死と生の曖昧な関係

「ヒア アフター」の一場面 (C)2010 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
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「ヒア アフター」の一場面 (C)2010 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

 80歳を迎えながら、ものすごい勢いで映画を撮り続けているクリント・イーストウッド監督の、前作「インビクタス/負けざる者たち」からわずか1年で発表する「ヒア アフター」が19日、全国で公開される。

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 パリで活躍する女性ジャーナストのマリー(セシル・ドゥ・フランスさん)、ロンドンで母と双子の兄と暮らす少年マーカス、そして、自らが持つ、死者と交信できるという特殊能力を嫌悪するサンフランシスコ在住の霊能者ジョージ(マット・デイモンさん)。それぞれに心に傷を抱えた3人を追いながら、「人は、与えられた人生を精いっぱい生きるべきだ」と信じるイーストウッド監督が描くヒューマン作だ。

 当初3人は、これはオムニバス映画かと思うほど接点がない。それが、物語の進行とともに少しずつ近づいていく。そのまとまり方が、緊張をはらみながら実に心地いい。脚本のピーター・モーガンさんは、「クイーン」(06年)や「ラストキング・オブ・スコットランド」(06年)、「フロスト×ニクソン」(08年)などを手掛けた人物。多くが、実在の人物や史実を基に書いてきたが、今作は少し毛色が違う。モーガンさんは、大切な友を事故で失った直後に、この脚本を書き始めたという。それはやがて三つの物語に発展していくが、それは完成後、何年も引き出しの中にしまいこまれていた。それを読んだ製作総指揮のスティーブン・スピルバーグさんが監督として白羽の矢を立てたのが、「硫黄島からの手紙」「父親たちの星条旗」(ともに06年)で組んだイーストウッド監督だった。死と生の曖昧な関係を描いた、いたって観念的な物語だ。しかし、身近な人、愛する人を失った経験のある人なら、ここで描かれていることは“感じ取れる”はずだ。

 ジョージを演じるのは、「インビクタス」(09年)で組んだデイモンさん。優しさの中に惨めさと苦さを抱えた霊能者を、彼だからこその演技で見せる。マリーは、「スパニッシュ・アパートメント」(02年)などに出演したベルギー出身のフランスさんが演じる。19日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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