ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、ゾンビがうろつく世界を生き抜くさえない主人公の奮闘を描いた花沢健吾さんのマンガで、2年連続で「マンガ大賞」にノミネートされた「アイアムアヒーロー」です。「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の生川遥さんに作品の魅力を聞きました。
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−−作品の魅力は?
連載作が打ち切られ、アシスタントに逆戻りしたマンガ家・鈴木英雄(35歳)のうだつのあがらない日々……を描いたマンガかと思いきや、第1巻のラストで日常が崩壊、以降急速に物語は展開を始めます。
かみつかれるとゾンビのようになってしまう原因不明の奇病の流行。錯綜(さくそう)する情報、見えない全貌、振り払えない恐怖……世界が音を立てて崩れ始める時、男はヒーローになれるのか!?
……逃げ回る英雄たちの言動は、まさに「現代日本」ならではのリアリティーにあふれており、全く新しい「極私的パニックホラー」作品となっています。
「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「ルサンチマン」でマンガファンから熱狂的な支持を集めた花沢健吾さんの最新作であり、各誌マンガランキングにも軒並みベスト10入りを果たす「今最も読まなきゃヤバいマンガ」です。まずはぜひ第1巻を読んでみて、この衝撃を体感してください!!
−−作品が生まれたきっかけは?
サラリーマンの奮闘を描いた現実ベースの前作「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を描いていらっしゃった時の、花沢さんの「日常をぶっ壊したい」「大きな嘘(うそ)がつきたい」という衝動がきっかけとうかがっています。
「宇宙人が襲ってくる」「大災害が起こる」などのパニックものの中から、「ゾンビもの」というジャンルを選択されたのは、「勝ち組にも負け組にも平等に襲ってくるどころか、むしろ友達がいない方が感染確率が低いところが面白い」という、非常に花沢さんらしい(笑い)理由や、映画「ドーン・オブ・ザ・デッド」や、「アイアムアレジェンド」の冒頭の廃虚シーンなどに触発されたところが大きいようです。
パニックの混乱をより臨場感をもって伝えるには、「壊れる前の日常」をいかに描くかが重要だということで、リアリティーを持たせるために、花沢さんご自身に近いキャラクター設定とした上で、主人公の日常描写を丸々1巻本分描くという、かつてない大胆な構成となりました。
−−編集者として作品を担当するうえでうれしいこと、逆に大変だったエピソードを教えてください。
うれしいこと……は、第一に、花沢健吾というマンガ家の才能を最も近いところで拝見できるところでしょうか。
毎回の打ち合わせのたびに、ディティールやリアリティーへのこだわりにうならされます。ストーリー展開と同じかそれ以上に、キャラクターの心情の動きを大事に考えていらっしゃるので、「こっちの展開にした方が楽」という方向が見えている場合でも、納得するまで考え抜いてから選択をしていかれます。打ち合わせ中、お互い考えすぎて沈黙し、最終的には2人して何を考えているのかわからなくなるということもしばしばあります……。
ツイッターなどですっかり下ネタキャラが定着された花沢さんですが、実際にセクハラ発言をされたことは実はあまりありません。
また、お陰さまで驚異的なスピードで重版がかかり、読者の方の反響が大きい作品であることも何よりの喜びです。一人でも多くの読者に驚きと恐怖と興奮を味わっていただきたいので、より一層面白い作品となるよう花沢さんをアシストしていければと思っております。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
「今後どうなるの?」という質問をよくいただきますが、実は先の展開はあえて考えすぎないようにしています。作家も担当もどうなるかわからないからこそ、緊張感を保っていられますし、毎週が勝負という心持ちでギリギリのところでアイデアを出していくのが、週刊誌連載作のだいご味でもあります。そういう意味では、主人公と作家と読者が同じように、「今後どうなってしまうのだろう」という思いを共有している稀有(けう)な作品と言えるのではないでしょうか……。
コミックス派の方へ……5月末発売予定のコミックス第6巻では、感染したとおぼしき女子高生・比呂美がどうなってしまったのか!?がいよいよ明らかになります。ご注目を!
本誌連載派の方へ……英雄たちを取り巻く状況は今後も刻々と変わっていきます。ストーリー展開もさることながら、英雄と比呂美の奇妙な関係に注目してください!!
今後とも「アイアムアヒーロー」を、なにとぞ、なにとぞよろしくお願いいたします!!!
小学館「ビッグコミックスピリッツ」生川遥
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