「プラダを着た悪魔」で一躍売れっ子脚本家となったアライン・ブロッシュ・マッケンナさんの新作「恋とニュースのつくり方」が2月25日に封切られた。超低視聴率で打ち切り寸前の情報番組のプロデューサーになったヒロインが、ベテランキャスターのわがままに手を焼きながらも番組の再生に奮闘する姿を描いたロマンチックコメディーだ。ヒロインのベッキー・フラーを演じるのは、「きみに読む物語」(04年)や「シャーロック・ホームズ」(09年)のレイチェル・マクアダムスさん。ベテランキャスター、マイク・ポメロイ役をハリソン・フォードさん、コリーン・ペック役にダイアン・キートンさんとベテラン勢が脇を固める。「1930~40年代のコメディーが大好き」と話すマッケンナさんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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−−米ニューヨークのテレビ局が舞台です。リサーチはどのように行ったのでしょう。
実際にモーニングショーの現場に行き、それを見て、番組スタッフと話をし、コントロールルームやバックステージも見学しました。彼らは深夜の時間帯から起きて、私たちが現場に着くころにはすでに数時間も現場にいるんです。仕事に対してとても献身的で、そこが最も感銘を受けた点でした。だからこそ彼らの話を書きたかった。それに、彼らは自分の仕事に情熱を持っている。その点でも、映画のいいキャラクターになると思いました。
−−お天気おじさんがジェットコースターに乗り中継するシーンや、キートンさん演じるコリーンが肉じゅばんを着て力士に体当たりする場面では大いに笑いました。
天気予報士のアーニー(マット・マロイさん)とダイアンはすごくスタントが好きで、シーンを増やしたくらいなんです。その相撲のシーンの撮影ではダイアンが転んでしまい一瞬現場に緊張が走ったんですけど、幸い何事もなく済みました。
−−キートンさんとフォードさんは大ベテランの俳優。そんなお二人に最も言わせたかったせりふは?
ハリソンの場合は、マイクが番組の宣伝用テープに映っているブリーフケース持参の自分を見ながら、「あのブリーフケースの中身は? 弁当持ってどこへ?」とたずねるせりふ。もともと書いていたせりふで、面白くてみんなとっても気に入っていたので撮影のときもそのシーンはすごく楽しみでした。ダイアンのは、終盤で「いいプロデューサー(ベッキーのこと)が付いて、みんなで番組を作り上げた。それをあなた(マイク)がぶち壊した」というせりふ。彼女は、この映画の中ではみんなを笑わせるキャラクターなんですけど、このせりふによって、自分がみんなの“家族”だということを十分理解している人物だったということが(観客に)伝わるのです。
−−序盤で、就職活動中のベッキーは履歴書を1社に5通出します。米国での就職活動ではそういうことをするのは普通なんですか。
普通じゃないわ(笑い)。必死だということを表現するため。積極的でねちっこいところを見せたかった。
−−そんなベッキーに限らず、あなたが描くヒロインは皆、魅力的です。キャラクターを描くときに心掛けていることは。
人々が共感できるようなキャラクターを作っています。障害があってもそれを乗り越えていく、みんなが応援できるようなキャラクター。特に、女性たちの共感を呼ぶような。そういう人たちが責任を持って、一生懸命仕事に取り組む姿を書きたいんです。
−−とはいえ、実は最近の日本では「頑張って」とか「一生懸命」という言葉が敬遠されています。そういう風潮をどう思いますか。
本当に? 日本のことはよく分からないんですけど、米国では若い女性が若い男性よりも稼ぐようになっているんです。だから今回のような話を書きたかった。女性が努力してやりたいことをやって、人間関係を築き上げ、それで自分がポジティブになれる。そういうことが世界中にあるといいと思っているんですけどね。
−−「恋とニュースのつくり方」は日本でも先日公開され、「元気が出た」などの声が多く寄せられています。マッケンナさんにとって働く女性のサクセスストーリーが続きましたが、今後作ってみたい作品と、この俳優・女優のために書いてみたいというシナリオは?
いま2本撮影中で、ひとつはマット・デイモン主演の「We Bought a Zoo」という作品。キャメロン・クロウが監督です。もう1本は本の脚色で、サラ・ジェシカ・パーカー主演の「I Don’t Know How She Does It」。そして、「シンデレラ」の新バージョンをディズニーのために執筆中です。脚本を書きたい特定の俳優・女優は、い過ぎて言えません(笑い)。でも、マットやサラは、まさにそういう役者たちです。
−−ヒット作を連発する秘訣(ひけつ)と、だからこそのプレッシャーは?
プレッシャーばかり感じています。でも、自分にとって意義があるもの、自分が見たいと思うものを情熱を持って作っていけば、他の人も興味を持ってくれるだろうという期待を持って書いています。映画作りの素晴らしいところは、魔法というか、化学反応というか、そういうものによってうまくいくときはすごくうまくいくこと。だから、いつもベストな作品になることを願って書いています。
<プロフィル>
1967年、米ニュージャージー州生まれ。ハーバード大学卒業後、本を共著するなどしたのち、06年ベストセラー小説の映画化「プラダを着た悪魔」の脚本を手掛ける。この作品は興行的な成功はもとより、主演のメリル・ストリープさんをアカデミー賞にノミネートさせるなど成功を収めた。他の主な作品に「スリー・トゥ・タンゴ」(99年・未公開)、キャサリン・ハイグルさん主演の「幸せになるための27のドレス」(08年)がある。
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