話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、単身赴任中の夫を持つ1人暮らしの主婦・花が自分のために作るズボラ飯＝手抜き料理のレシピと、その日々を描いた久住昌之さん原作、水沢悦子さん画のマンガ「花のズボラ飯」（秋田書店）です。同作を連載中の月刊マンガ雑誌「エレガンスイブ」編集部の金城小百合さんに作品の魅力を聞きました。（毎日新聞デジタル）

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　−−この作品の魅力は？

　主人公の花が可愛い！　それに尽きると思います。一応グルメマンガとうたってはいますが（もちろん作中に出てくるレシピはどれもおいしいです！）、この作品が多くの読者に愛される一番の魅力は、花が歌ったり踊ったりしながら楽しそうに料理を作り、それをひとりで幸せそうに食べる、その時々の可愛さだと思います。

　原作者の久住先生も、花の魅力が最も伝わりやすいシチュエーションを毎回設定していると思います。それを受けて、作画の水沢先生が全力で花を可愛く描いてくださっています。料理を食べた瞬間の「うんまー！」という大きい決めゴマから、日常のちょっとした仕草を描く細かいコマに至るまで、花は生き生きと動き、とても可愛いです。本来コマの割り過ぎや小さいコマは減らすべきだと思うのですが、花の場合はどれも可愛くて削れず、むしろ「ここにこそ可愛さの神髄があるのでは……！」と思わされたりもします。

　−−作品が生まれたきっかけは？

　「孤独のグルメ」「かっこいいスキヤキ」「中学生日記」など久住先生の作品が好きで、でも私は主婦向けの女性マンガ誌の編集のため、お仕事ができるとは考えていませんでした。しかしある時、久住先生が他の女性誌で1話だけ原作を担当されているのを読み、「そういうのもあるのか」と目から鱗（うろこ）でお仕事をお願いするに至りました。

　−−作品誕生までのエピソードを。

　小誌「エレガンスイブ」の読者である主婦と久住先生の間にある溝を埋めるため、共感してもらえる花のキャラクター「主婦」「夫がいないときは部屋が汚い、ズボラ」などが打ち合わせで決まっていきました。

　最も苦労したのは作画の先生を探すことでした。久住先生×女性誌、それだけでもだいぶギャップのある組み合わせだと思いましたので、どうせなら久住先生作品史上、そしてエレガンスイブ史上いろいろギャップのある作品にしたいとの野望がわき、作画の最終候補を数人に絞りました。結果、編集部、久住先生共に水沢先生にお願いしたいとの結論に至りました。会議中に編集長が「水沢先生しかいないでしょう！」と言い切った瞬間を、私は一生忘れません（笑い）。

　−−編集者として作品を担当するうえでうれしいことを教えてください。

　いろいろな層の読者から応援いただけることがうれしいです。母と息子で共有して読んでいるとの声も聞き、そういうのは面白いし新鮮です。満を持して始めた連載でしたが、連載当初は主婦に受け入れてもらえるか不安でした。そんな中、連載3回目ぐらいでしょうか、編集部に届いた主婦からのアンケートハガキに「いつも元気な花はわたしの宝物です」と書いてあり、久住先生と水沢先生にうれし涙ながらにご報告した記憶があります。

　書店さんからの応援もとてもうれしいです。発売日前から注目してくださった書店さんがいくつもあり、特に「COMIC ZIN」さんなどは発売3日で500冊を完売してくださいました。書店員さんらの「本を売ろう」という意気込みが感じられてこちらも何度も胸が熱くなり、また支えていただきました。

　−−大変だったエピソードは？

　大変なこと……特にはないです。強いて言えば、久住先生の原作をもとに毎回料理をすることでしょうか。ピザを注文する回などは料理いらずだったのでうれしかったです。水沢先生も作ってくださっています。

　−−今後の展開、読者へ一言お願いします。

　今後もますますヒートアップし、ダジャレ過剰、ヨダレ過剰のズボラレシピを楽しんでいただければと思います！　ぜひ雑誌でも読んでみてください！

　「エレガンスイブ」という雑誌は主婦向けですが、面白い連載がいくつもあります。よく「花のズボラ飯」と一緒に話題にのぼるのが、函岬誉さんの「嫁姑の拳」。マーシャルアーツの達人の嫁と、合気道の師範である姑（しゅうとめ）が死力を尽くして闘う痛快嫁姑アクションコメディーで、マンガの全ジャンルにおいて異色作だと思います。また今日マチ子さんの最新連載作「アノネ、」や、独特の感性が人気の衿沢世衣子さんの「犬部！」、ギャグ漫画家・施川ユウキさんによる初ホラー「寝ろ、起きろ、学校行け！」など、いろんな方が楽しめる連載が満載です。ぜひ一緒に読んでみてください！