注目映画紹介:「ザ・ファイター」 実在のボクサー兄弟の再起を描いた感動作

「ザ・ファイター」の一場面 (C)2010 RELATIVITY MEDIA.ALL RIGHTS RESERVED.
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「ザ・ファイター」の一場面 (C)2010 RELATIVITY MEDIA.ALL RIGHTS RESERVED.

 今年の米アカデミー賞でクリスチャン・ベールさんが助演男優賞に、メリッサ・レオさんが助演女優賞に輝いた「ザ・ファイター」(デビッド・O・ラッセル監督)が全国で公開中だ。80年代にプロデビューしたボクサーのミッキー・ウォードと、父親違いの兄ディッキー・エクランドという実在の人物に焦点を当てた。

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 過去の栄光にとらわれ、いまは薬物にハマり身を持ち崩しているディッキー(ベールさん)と、兄と母(レオさん)から言われるがままに試合を重ね、負けが続いているミッキー(マーク・ウォールバーグさん)。ディッキーが警察ざたを起こし監獄に送られてしまったことで、それぞれに転機を迎えた2人が再起をかけた試合に挑んでいく感動のドラマだ。

 まず圧倒されるのは、ディッキー役のベールさんの役作り。本人は役作りの表面的な部分(体重の増減など)についてクローズアップされるのは好まないようだが、体重を13キロも減量し、髪の毛を抜き、さらに歯並びまで変えたことは、やはり特筆すべきだろう。また、ディッキーとミッキー、2人の母親を演じたレオさんは、長男を溺愛するやや“はすっぱ”な母親になりきり、「フローズン・リバー」(08年)では手にできなかったオスカー像を手に入れた。

 激戦の果てに大切なものを取り戻す兄弟。そして、大切なものに気付く母。ラッセル監督は、これまでに「スリー・キングス」(99年)や「ハッカビーズ」(04年)など数本の長編を手掛けているが、今作が最もドラマチックだ。丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で順次公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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