逆境無頼カイジ:「強い意志」で命懸けのギャンブル描き話題に 震災後に表現変更も

「逆境無頼カイジ 破戒録篇」(C)福本伸行/講談社・VAP・NTV
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「逆境無頼カイジ 破戒録篇」(C)福本伸行/講談社・VAP・NTV

 さえない主人公が、過激なギャンブルに命を懸ける姿を生々しく描いた人気マンガをアニメ化した「逆境無頼カイジ 破戒録篇」(日本テレビ、毎週火曜深夜0時59分)が人気を集めている。テレビ放送しづらいとされる「ギャンブル」を題材にしながら、表現についても心を砕いた意欲作だ。

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 「カイジ」は、96年から福本伸行さんがヤングマガジン(講談社)で連載し、コミックスの発行部数が累計1700万部を超える人気マンガ。知人の借金を肩代わりし、多額の負債を抱えたカイジが、危険なギャンブルの世界に巻き込まれ、個性的な強敵たちと命がけの駆け引きを繰り広げるという物語で、07年10月~08年3月にテレビアニメ化されたほか、09年10月には藤原竜也さん主演で実写映画化されて人気を集め、11年11月には、ライバル・一条役に伊勢谷友介さんを起用した映画第2作の公開も決まっている。

 テレビアニメの続編の「破戒録篇」は、原作の「賭博破戒録」に収録された「地下チンチロ」編と、「パチンコ沼」編が原作。前作のラストで借金が1000万円に膨らんだカイジは、身を隠していたが、ひょんなことから見つかってしまい、地下の強制労働施設に送られ、班長の大槻とのチンチロリン勝負に大負けしてしまう。その後、6000万円の借金返済のため一時的に自由の身になったカイジは、裏カジノで1玉4000円という破格のパチンコ「沼」の攻略をもくろむ。しかし、そこには裏カジノの店長、一条の卑劣なわなが待ち受けていた……というストーリー。カイジ役の俳優・萩原聖人さんやナレーションの立木文彦さんら前作の声優陣に加え、一条役で「君に届け」などで知られる人気声優の浪川大輔さんが出演する。

 「NANA」や「デスノート」、「君に届け」など数々の人気アニメを手がけた日本テレビの中谷敏夫プロデューサーは「今回のエピソードは、今まで出会ったすべての作品のすべてのエピソードの中で一番アニメにしたかった」と話す。日ごろから「キー局のアニメには、裏番組にも勝てる強いメッセージ性が不可欠」と口にする中谷さんは、今回の「破戒録篇」では勝ち負けの先にあるカイジの美徳や人情について浮き彫りにしていくという。

 中谷さんは「『この表現は難しいからカット』というなら最初からやらなきゃいい」と作品の持つ「メッセージ性」を重視した作り方を心がけてきた。戦後の特別少年院を舞台にしたマンガ「RAINBOW」をアニメ化した時は、作品の過激な表現について「時代性を考慮したうえで重要」と表明した「おことわり」を番組冒頭に入れ、「カイジ」の前作を放送する時にも、命懸けのギャンブルの先にある人間同士の熱いドラマを描くことに心を砕いた。

 しかし、今回の「破戒録篇」を制作している最中に東日本大震災が起き、中谷さんはあるシーンについて全面差し替えを指示した。主人公のカイジが、一か八かの高額ギャンブルに身を投じていくさまを激流にたとえた原作のシーンで、声優陣のレコーディングも終えてほぼ完成していたが、シナリオごと変更した。「原作の描写はカイジならではの素晴らしい演出だが、現状でそのままアニメ化して放送したら誰かを傷つけてしまう。何か表現するには必ず考察が必要だということ」と語る。

 東京都の青少年育成条例改正など、アニメやマンガをめぐって表現と規制の問題が取りざたされているが、「丁寧に考察を重ねたうえで、やるものはやるという強い意志を持つべきだ。むしろこの時期にカイジを放送できるのは至福の喜び。カイジたちの戦いをしっかり表現することで、視聴者を勇気づけられるはず」と語る。カイジの生きざまに込められた熱いメッセージを感じたい。(毎日新聞デジタル)

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