西田敏行:「お父さんもちょっとだけ泣いて」 被災地への思いを語る 映画「星守る犬」完成会見

映画「星守る犬」の完成報告会見に登場した(左から)西田敏行さん、玉山鉄二さん、川島海荷さん
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映画「星守る犬」の完成報告会見に登場した(左から)西田敏行さん、玉山鉄二さん、川島海荷さん

 俳優の西田敏行さんが9日、東京国際フォーラム(東京都千代田区)で行われた主演映画「星守る犬」(瀧本智行監督)の完成報告会見に登場。「とにかく泣ける」と話題を呼んだ村上たかしさんのマンガを映画化した作品で、西田さん演じる中年男性と愛犬との旅を追う感動のロードムービー。東日本大震災の被災地となった東北地方でもロケを行っており、映画には震災前の美しい景色も収められている。西田さんは「歯を食いしばっている被災地のお父さんも、この映画にかこつけて、ちょっとだけ泣いてみたらどうですかと提案してみたい。泣くことで浄化されることもありますからね。そんな気持ちもどこかにあります」と思いを語った。 

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 宮城県東松島市や福島県いわき市などで昨年夏にロケを行っており、福島県出身でもある西田さんは「大震災前の東北の太平洋側を記録することになった。美しい三陸の海やいわきの海も映っています。僕も子どものころに行ったいわきの海岸でも撮影していて、いつになったら(そこで)子どもたちの嬌声(きょうせい)が聞こえるのかと切ない思いです」と胸の内を語った。「震災でいろんなものを失ったと思いました。でも、人と人のきずなといった、震災の前に失っていたものを取り戻そうとしている自分にも気づきます。この映画も図らずも、そういうものを訴えている作品。素直にご覧なって素直に感じていただきたい。素晴らしい作品だと思っています」と切々と訴えた。

 会見には共演の玉山鉄二さん、川島海荷さん、中村獅童さんらも出席。玉山さんは「東松島は本当に景色が素晴らしくて、居心地のいい現場だった。被災された方々や土地や景色に、1年前に手助けしていただかなかったら、この作品もこんな素晴らしい作品にはなっていなかった」と話し、川島さんも「オフの日に電車に乗っていわき駅まで出て、映画を見たり、温泉に行ったりして……自分の行った場所がこういう状況になって、悲しい気持ちでいっぱい。一日でも早く復興してほしいし、できる限り応援したい」と思いを語った。

 原作の「星守る犬」(双葉社)は、コミックスが09年夏に発売されると、TBS系の情報番組「王様のブランチ」で「とにかく泣ける」「今年一番の感動作」として話題を呼び、雑誌「ダ・ヴィンチ」の「BOOK OF THE YEAR 2009」で「泣けた本」と「読者が選ぶプラチナ本」第1位とダブル受賞するなどし、販売部数が47万部を突破するベストセラー。

 タイトルの「星守る犬」は、「犬がもの欲しそうに星を見続けている姿から、手に入らないものを求めること」を意味している。山中に放置された自動車の車内から中年男性とその飼い犬の遺体が発見され、身元不明の遺体を引き取った市役所の福祉課勤務の青年が調べ始めると、失業、離婚、一家離散、ホームレス……などを経験した「おとうさん」が、たった1匹、自分のそばに残った愛犬ハッピーとボロボロの車で旅に出たこと、その旅の行く末が明らかになっていく……というストーリー。玉山さんは市役所に勤務する青年・奥津を、川島さんはひょんなことから奥津と出会い、無理やり同行する少女・有希(ゆき)を演じており、余貴美子さん、岸本加世子さん、藤竜也さん、三浦友和さんらも出演。コミックスの表紙に登場するひまわり畑の場面は40万本が咲き乱れる北海道名寄市で撮影した。6月11日から全国で公開予定。(毎日新聞デジタル)

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