はじめの1巻:「鋼鉄の華っ柱」 コメディーメーカー西森博之最新作 “元御曹司”の逆境ライフ

西森博之さんのマンガ「鋼鉄の華っ柱」(小学館)1巻の表紙
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西森博之さんのマンガ「鋼鉄の華っ柱」(小学館)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「週刊少年サンデー」(小学館)で連載、“御曹司”から一転、無一文となった御前崎真道(おまえざき・さねみち)の“オレ様で紳士”な日々を描いた西森博之さんのコメディーマンガ「鋼鉄の華っ柱(はなっぱしら)」です。

ウナギノボリ

 誰もがうらやむ資産家のひとり息子で高校生の御前崎真道(おまえざき・さねみち)は、成績優秀、スポーツ万能、性格はキザで“オレ様”ながらも温厚、紳士であることを基本に行動している。一方で、ねたみから自分に危害を加えようとした男子生徒を、たとえ話で諭して笑顔で脅し、「僕は心が広い」と悦に入る一面も。ある日、真道の父親の会社が次々に倒産。「御前崎御殿」と呼ばれた城のような邸宅は債権者の手に渡り、財産は衣服に至るまで没収され、御前崎家に仕えて育った姉弟・佳賀朝涼、夏野と共に無一文になる。ここから真道の“逆境ライフ”が始まっていく……という物語。

 ◇「週刊少年サンデー」編集部 鈴木翼さん 「殺虫剤とアリで人を襲撃」

 初期には真道を好きになっていいのか困惑する読者もいると思います。上から目線で、腹の底が分かりにくいですし、あのスペックは反感を買うでしょうし。ですが、ここぞという時に見せる思考の鋭さは人間の真理を突きつけられているようで非常に納得させられ、彼に引きつけられてしまいます。凡人離れした環境で育った真道だけに、達観した心の強さがあるのでしょう。回を追うごとに真道の腹の底は見えてきます。真道の強さに寄り添って感心しながら読んでいただくと楽しいのではないのでしょうか。

 それと西森先生は希代のコメディーメーカーでもあります。思いがけない小さなフキダシのセリフひとつひとつにも笑いの魂がこもっていますので、隅々まで楽しんでほしいですね。1巻の笑えるお薦めは殺虫剤とアリで人を襲撃するシーンですね。これをそう使うかと。

 あとは佳賀姉弟にもご注目ください。夏野は(西森さんのマンガ)「今日俺(今日から俺は!!)」の今井のようにアホですねー。朝涼は「天こな(天使な小生意気)」の恵にも匹敵する美しさがありますねー。この2人だけでも回していけるくらいキャラの深さがありますから、入り口として2人から好きになってみるのもいいかもしれませんね。

 ◇書店員の推薦文 ひょうたん書店西田本店の筒口征洋さん 「痛快なヘンテコ紳士っぷりが楽しい」

  素直なのに、どこかひねくれている。正しいのに、どこか間違っている。そんな真道君の痛快なヘンテコ紳士っぷりが一から十まで楽しくて、最初からずっと彼の言動に目が離せない作品です。彼の振りかざす正義感はおおいに共感できるのに、その結果として繰り出される行動はこちらの予想の上を行き、一言ではとても言い表せない主人公となっています。これぞまさに“西森キャラ”。話も良い意味で期待を裏切る展開ばかりで、西森作品が初めての人にもぜひ読んでもらいたいです。

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