注目映画紹介:「テンペスト」 名女優ヘレン・ミレンがシェイクスピア最後の作品に挑戦

「テンペスト」の一場面(C)2010 Touchstone Pictures
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「テンペスト」の一場面(C)2010 Touchstone Pictures

 シェイクスピア最後の作品をミュージカル「ライオンキング」、映画「フリーダ」(02年)などを手がけた女性演出家ジュリー・テイモア監督が映画化した「テンペスト」が11日、公開された。国を追われた主人公のミラノ大公を男性から女性に置き換え、「クィーン」(06年)、「RED/レッド」(10年)のヘレン・ミレンさんが演じている。

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 ナポリ王のアロンゾー(デヴィッド・ストラザーンさん)、息子のファーディナンド(リーヴ・カーニーさん)、ミラノ大公のアントーニオ(クリス・クーパーさん)らを乗せた船が、突然の嵐に襲われて、絶海の孤島にバラバラになって漂着。アロンゾーとファーディナンドははぐれてしまう。この島には、かつてミラノ大公として民に愛されながら、アントーニオやアロンゾーらの謀略によって国を追われたプロスペラ(ミレンさん)と娘ミランダ(フェリシティ・ジョーンズさん)が住んでいた。嵐はプロスペラが魔術で起こしたものだったのだ。プロスペラは空気の妖精エアリエル(ベン・ウイショーさん)を操り、さまざまな魔術で島に漂着した王らに復讐をしようとたくらむ。

 エアリエルの歌声に導かれたファーディナンドはミランダと出会い、お互いの美しさにひかれて2人は恋に落ちてしまうが、それもプロスペラのはからいだった。一方、プロスペラにこき使われていた怪物キャリバン(ジャイモン・フンスーさん)は、飲んだくれの道化師トリンキュロー(ラッセル・ブランドさん)と酒蔵係のステファノー(アルフレッド・モリナさん)から酒を飲ませてもらったことから、2人を主人と仰ぎ、プロスペラを殺害してこの島の王になるようそそのかす……と個性的な登場人物たちのさまざまな陰謀や思惑が交錯する。

 実在の島で撮影されたというロケーションが秀逸。軽妙な会話のやりとりやテンポの良さも舞台さながらだ。大女優のミレンさんは、アカデミー賞衣装デザイン賞にもノミネートされた前衛的な衣装に身を包みながらも、品格があふれ出ている。主人公を女性にしたことによって、娘を過保護に見守る母親という図式もでき上がって、現代社会に通じるものも垣間見える。操り人形のような男性たちもこっけいだ。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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