先月、米国で開かれた世界最大のゲーム展示会「E3」で任天堂の家庭用ゲーム機「Wii U(ウィー・ユー)」とソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の携帯ゲーム機「PS Vita(プレイステーション・ヴィータ)」がお披露目された。新しい機能や装置を取り込むことで常に時代をリードしてきたゲーム機。新型の魅力と課題に迫った。【河村成浩】
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「Wii U」はリモコンのような操作端末「コントローラー」をラケットなどに見立てて振り回す異色の体感型ゲーム機として人気を博し、世界で8600万台を出荷した「Wii」の後継機だ。コントローラーに6・2インチのディスプレーを備え、タッチパネルに対応する。テレビの画面を見ながら、手元にある端末の画面でもゲームの情報を得られ、テレビを占有せずにゲームも遊べる……という触れ込みで、発表会で自ら新型機の魅力を語った岩田聡社長は「娯楽の新しい形」と自信を見せた。
展示会で見せた試作機では、二つの画面を使い、テレビ画面から飛んでくる矢を端末を「盾」に見立てて防いだり、テレビ画面に背を向けて手元の端末で“背中”の状況を確認する……など、従来にない操作で来場者にアピールした。
PS Vitaは、世界で7000万台を出荷した携帯ゲーム機「PSP」の実質的な後継機で、今年末の発売が予定されている。液晶画面の大きさはPSPより一回り大きい5インチ、解像度はPSPの4倍。画面だけでなくゲーム機背面がタッチパッドになっており「つまむ」「はじく」といった操作が可能だ。
発表会では価格が明かされ、Wi−Fi版が2万4980円、3Gも付くモデルが2万9980円。さまざまな機能を搭載したことから「3万円を切るのが難しい」と言われていただけに、関係者を驚かせた。
大きくニュースに取り上げられ、期待も大きい両ゲーム機だが課題もある。「Wii U」は、従来のテレビゲームに興味のなかった利用者を取り込んだWiiの路線を続け、さらにゲームソフトを積極的に買う利用者「コアユーザー」の取り込みを図ることだ。だがWiiでは、その斬新な操作の思想をうまくゲームに落とし込めたとは言い難く、その結果として任天堂以外のゲーム会社から出た専用ソフトが苦戦。今ではソフトそのものが出づらくなっている。「Wii U」でも、コアユーザーを取り込めるゲームを出せるかは未知数で、発表後には任天堂の株価が下落した。市場の厳しい評価をどう覆すかに注目が集まりそうだ。
「PS Vita」は、人気ゲーム「モンスターハンターポータブル」シリーズなどのヒットで売れ行き好調なPSPの後継機とあって、日本でのヒットが有力視されている。だがPSPは、据え置き型のゲーム機が主流の欧米では苦戦。また3G向けの通信料金が未発表で、PSPのソフトメディア「UMD」が使えないこと、「プレイステーションネットワーク」の個人情報流出問題で傷ついたブランドの回復もポイントになりそうだ。
そして最大のライバルは、携帯電話の無料ゲームだろう。SNS大手のDeNAが運営する「モバゲー」は、ゲーム関連で年間790億円の売り上げがあり、国内のゲームソフト市場の3300億円(09年)と比べても無視できない存在となりつつある。ゲーム業界に詳しいフリーライターの小野憲史さんは「無料ゲームで満足しているユーザーを、パッケージゲームの側に引き戻せるかがカギ。任天堂の岩田社長が『無関心が怖い』と言っていたが、今はその指摘通りテレビゲームに無関心になりつつある人が増えている」と話している。
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