1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「モーニング・ツー」(講談社)で連載、天使の声といわれるボーイソプラノを持つ少年を主人公にした鎌谷悠希さんの音楽マンガ「少年ノート」です。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
中学入学を控えて、母と一緒に学校へあいさつに行った少年・蒼井由多香は、学校で歌が聞こえてくる方向へ向かう。由多香は、合唱に感動して、その場で入部の意思を伝え、ソプラノで好きな歌を歌うが、一部の部員から「痛すぎ」と陰口をたたかれてしまう……というストーリー。「モーニング・ツー」に掲載された鎌谷さんの読み切りマンガ「オクターヴ」を下敷きにしている。
作者の鎌谷悠希さんは合唱を聴くのが大好き。とりわけ、変声という避けられない運命を背負う少年合唱には思い入れがあり、前作「隠の王」連載中から「いつかボーイソプラノを題材にしたマンガを描きたい」と思っていたようです。
最初に鎌谷さんからうかがったアイデアや、読み切り「オクターヴ」の掲載、そして「少年ノート」に至るまで、さまざまな試行錯誤を重ねてきました。そのなかで、ストーリーや登場人物は大きく変わりましたが、失われゆくものを表現するという根本は変わっていません。はかないからこそ美しく輝くものが、この物語にはたくさん詰まっています。
また、誌面から音が流れてくるような歌唱シーンも見どころです。1巻に登場する曲「COSMOS」「春に」「君をのせて」などは、学生時代の合唱コンクールなどで実際に歌ったことのある人も多いと思います。これからもいろんな歌が出てきますので、聴き覚えのあるメロディーに“出会ったら”、ぜひ口ずさんでみてください。そうすれば、「少年ノート」の世界をもっともっと楽しめるはず!
音楽が、人や場面や時間をも支配するような、そんな音のある空間に心奪われた作品でした。強い感情移入をうながすマンガであり、読んでいるうちにいつの間にか気持ちは合唱部員の一人となり、由多香君の感じている世界を自分も味わってみたいと思わせてくれるほど。彼の才能は繊細なバランスの上に立っていますが、だからこそ一瞬のきらめきは力強く輝き、ますます目が離せなくなってしまいます。触れると壊れるような、危うくて美しい彼の姿を、ぜひ多くの人に目撃してほしいです。
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