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11月21日(木)放送分
小津安二郎監督や女優の山田五十鈴さんらが終戦の1945年8月15日を振り返って寄稿した手記を映像化したドキュメンタリー番組「映画人たちの8月15日」の前後編が8日と15日、WOWOWの「ノンフィクションW」で放送される。シンガポールへ軍報道部として出征中に終戦の日を迎えた小津監督がつづった手記や、人気スターだった山田さんが終戦を知って「安堵と不安を感じた」と記した手記など40人を超える映画人の生々しく貴重な証言から、戦前・戦中・戦後の映画界の様子を明らかにする。番組を企画し、“案内人”として出演するキネマ旬報映画総合研究所エグゼクティブディレクターの掛尾良夫さん(61)に話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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番組は映画雑誌「キネマ旬報」の60年8月下旬号に掲載された終戦15周年の特集記事「八月十五日の日本映画」を基にした。同記事には小津監督、山田さんをはじめ、山本嘉次郎監督、円谷英二監督、俳優の片岡千恵蔵さん、長谷川一夫さん、池部良さん、女優の田中絹代さんら40人以上の映画人が寄稿しており、その証言を写真や肉筆の手記、ニュース、アニメーション、再現ドラマなどを用いて映像化した。前編では終戦までの国家による検閲についての証言をまとめ、後編で終戦後の連合国軍総司令部(GHQ)による制約についてをまとめた。「キネマ旬報」は1919年創刊の老舗映画雑誌。1940年12月から1946年3月まで第二次世界大戦の影響で休刊していた。
掛尾さんは、戦後の映画産業ビジネスについて調べようと「キネマ旬報」のバックナンバーを細かく見返す中で同記事と出合い、「そうそうたる俳優、監督が無防備に(その日のことを)書いている。リアリティーがあってすごく面白い。これだけの人(映画人たち)が1945年8月15日にこういうことをしていたということを再現すれば多くの高齢の映画ファンが関心を持つだろう」と思い、3月初旬に再現ドラマ形式のドキュメンタリー企画を同局に提出したという。企画が進むうち、再現ドラマから今回の形になった。
前編の「映画界の『敗戦』」では、終戦当日に、山本監督は女優の高峰秀子さんを迎えた国策映画を撮影中で、高峰さんが気球を原子爆弾の投下と勘違いしておびえたエピソードや、当時まだ新人俳優だった池部さんが軍隊生活を送っていたインドネシアのジャングルを空腹でさまよっていたエピソードを取り上げる。「国家に統制される映画」では、稲垣浩監督が阪東妻三郎さんを主演にした映画「無法松の一生」で検閲によってカットされた部分を、資料から再現した。
後編はまず、円谷監督、木村荘十二監督らの手記などで終戦当日を振り返った。続いて当時東宝撮影所の所長だった森岩雄氏の手記を基に、1945年9月22日にGHQによる映画製作に対する指示を受け、森さんと松竹の城戸四郎氏、大映の菊池寛氏が反論する様子などを再現ドラマ化した。また、小津監督に焦点を当てた「小津安二郎と戦争」には、小津監督の従軍中の写真や出征先で戦争映画についてのアイデアなどをつづった肉筆のメモ「撮影に就てのノオト」、愛用品などが登場する。
掛尾さんは興味深いエピソードとして、国の検閲から解放された矢先にGHQから今後の映画政策方針を伝えられた一連の流れを記した森さんによる手記を挙げ「そのときのいきさつは映画の歴史の中で非常に興味深い」とコメント。「こういう番組がうまくいって、映画俳優についてのドキュメンタリーが作られるようになれば」と期待を寄せる掛尾さんは、「日本の歴史の大変大きな節目の日に影響力ある俳優、監督、映画関係者たちが何をしていたのかということ。そのなかでどういう未来を目指そうとしていたのかということは興味深い。彼らの証言を振り返ることで、これからの日本の方向をもう一度見直してほしい」と呼びかけている。
また、掛尾さんは「価値観が、ある瞬間に変わる。(そのことは今年)東日本大震災があって、(終戦当時と)すごく重なる」と指摘。震災によって映画業界、映画自体は変わるかと問いかけると「僕個人としては、震災後に泣きを誘う映画が期待通り当たっていない。空々しい涙はいらないのかなという感じはしている。価値観が変わった中で(映画界が)新しい価値観に変わっていけるかどうか。1945年8月15日は無理やりに(変化を)強制された。(今は)GHQなしで我々がどう変わっていけるかが大きいテーマ」と話した。今の映画人に期待することはと聞くと掛尾さんは「非常に時代が違うのでなかなか難しいと思う」とした上で「もっと人間個人として発言してほしい。(番組の基になった1960年の)特集のときみたいに」と答えた。
放送はWOWOWのドキュメンタリー番組枠「ノンフィクションW」で、「映画人たちの8月15日」として前編を8日午後10時、後編を15日午後10時に放送。
かけお・よしお。1950年7月19日生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店を経てキネマ旬報社に入社。NHKサンダンス国際賞を創設したほか、「キネマ旬報」編集長を務めた。「映画プロデューサーが面白い」「外国映画ビジネスが面白い」などの編集を手がけ、「映画プロデューサー求む」などを執筆している。
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2024年11月23日 17:00時点
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