黒川文雄のサブカル黙示録:コナミと任天堂 人生と商売の四季

 人生には「四季」がある。生まれてから死ぬまで、さまざまなめぐり合わせを四季と捕えるも良しである。年齢に関係なくその人生が春と感じることができれば春だし、厳しい冬というなら、その通りだ。重要なのは、一時的な側面だけ見て一喜一憂してもあまり意味がないということ。それぞれの人生では、それぞれが主人公である。苦しいことも、楽しいと思えるようになれば、道は開けてくるものだろう。

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 商売も同じである。このところ、一部新興企業による好業績の発表やM&A(企業の合併・買収)など、景気のいい話がニュースサイトをにぎわしている。特に企業の業態の転換は重要だ。人生の方針転換は、人の心のありようだから分かりづらいが、商売は数字に反映されるので分かりやすい。

 例えば、ゲーム大手コナミの12年3月期第1四半期(4~6月)連結決算を見てみよう。売上高は前年同期比3.3%増の約549億円、本業のもうけを示す営業利益は同144%増の約70億円。その中でも話題になったのがテレビゲームとソーシャルゲームの逆転現象だ。ゲームの売上高が前年同期の143億円から今期は77億円に半減したが、ソーシャルゲームは24億円から78億円へと3倍増になった。アーケードやカードゲームを合わせた「デジタルエンタテインメント事業」では、売上高は前年の250億円から261億円の微増だったが、営業利益は何と23億円から61億円へと3倍弱に増えた。人になぞらえば、成長(売り上げがアップ)し、さらに筋肉質(より高い利益を出せる)になったわけだ。

 一方、ここ10年で快進撃を続けてきた任天堂が業績不振に陥り、携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」の突然の大幅値下げを発表した。その決定に一部のファンなどから非難が集まっている。ファンの怒りももっともだが、企業の言い分もある。急激な変化に対応するためにさまざまな措置を取るのは、経営としては当たり前のこと。人の生き方になぞらえば、悪い運気や傾向を変えようというもので、それは明らかだ。

 これらを「時代の変化」と捕えるのか、それとも「勝ち負け」と捕えるのか。それは個人によって異なるだろう。しかし、人生も商売も同じ。四季の移ろいと思えば良いし、冬が過ぎれば春が来る。何が正しくて、何が正しくないという観点や、何が勝ちで何が負けとかいう観点で語っても、本質的には意味がないように思う。

 良いときもあれば、悪いときもある。そして誰もは、良いときはさらに良くなるように、悪いときはそれ以上悪くならないように努力する。人生だって商売だって同じことなのだから。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお=1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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