“ヤイコ”の呼び名で親しまれているシンガー・ソングライターの矢井田瞳さんが、ニューシングル「間違いだらけのダイアリー」を11月末にリリースした。出産・休養をへて、今年から本格復帰、アーティスト活動に意欲を見せる矢井田さんに、現在の心境や新曲について聞いた。(水白京/毎日新聞デジタル)
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−−休養中に出産して母になりましたが、ご自身で何か変化を感じますか。
自分より大切な人ができて、新しい感情にたくさん出合いました。今までは、どれだけ好きな異性がいても、どこか自分の方が可愛かったり大切だったり(笑い)。でも、自分より大切な人に出会えたことで、“守りたい”ってこれまでで一番強く思ったし、自分も強くなれる部分があって。そういった愛情の種類が増えた気がします。
−−最近、初めて人間ドックに行ったそうですが、それもやはり母になったことが影響していたりしますか?
そうですね。“自分より大切な人”が、物事の善悪が分かるまでは元気でいたいなあと思って、「これはいよいよ受けなきゃな」って。なんか、おばあちゃんのインタビューみたいになってますけど(笑い)、自分の生活からにじみ出てくる感情を一つ一つ大切にしたいなっていう年齢になってきたのかもしれないです。
−−“年齢”という点でいうと、新曲「間違いだらけのダイアリー」は、アラフォー女性の恋愛や生活を描くドラマ「ビターシュガー」(NHK総合)の主題歌として書き下ろした楽曲ということで、30代のヤイコさんにとっては身近なテーマではあったわけですね。
実は、普段行かない女子会に参加してみたんです。私、年上の女性の友だちが多いんですけど、話を聞いてると、みんなさまざまな人生を過ごしていて。例えば、仕事に生きるって決めた女性もいれば、結婚して全部ダンナさんにやってもらうっていう人、彼氏がほしいって言ってる人もいて、ホントにいろんな人生がある。でも、どれも間違いじゃなくて……。そこから「間違いだらけのダイアリー」っていう言葉が出てきたんです。そういう意味では、等身大の曲ができましたね。
−−歌詞に「分かりはじめた“アタシ”のストーリー」とありますが、自分自身、少しずつ分かってきて身についた“人生の歩き方”って?
“私はこれしかできない”って決めごとを作るのではなく、“こっちもいけるし、そっちもいけるけど、私はこれが好き”っていう見方になっていったことですね。視野が広がって、いろんなことが楽になった感じがします。
−−具体的にいうと?
デビューして1、2年は、大阪(地元)でしか曲が書けなかったんです。でもそれを言葉にしちゃうと、自分で自分を洗脳してしまうというか、体が本当にそうなってしまうので、それはもったいないなと。それで、“どこでも曲書けますよ”っていうスタンスで自分をマインドコントロールしていったら、最近は、どこでもすぐに曲書きのスイッチが入れられるようになって。曲のいいヒントがあったらメモっておいて、次に作れるときに引き出せばいいや、ぐらいに思えるようになったというか。
−−なるほど。では続いてカップリング曲「恋の魔法瓶」についてですが、これは初めてウクレレで作った楽曲だそうですね。
ウクレレのサウンド自体が癒やしというか、ほのぼの感を持っているので、歌詞も温かいものが自然と出てきたし、“日曜日にダラダラしながら書きました”みたいな感じで、実際にソファでくつろぎながら、“好きな人をいとしいと思う気持ち”をストレートに表現しました。「写真機」とか、ちょっと古めかしくて堅い言葉が好きで、今回の“魔法瓶”もずっと使いたいと思ってたんです。
−−主人公は歌の中で「何度歩いても、覚えられない下北沢」といっていますが、なぜ下北沢?
私自身が覚えられなくて、(東京都世田谷区)下北沢を(笑い)。線路を渡る場所がいっぱいあるし、プラス、見る場所(店)がいっぱいあるので、いろんな場所に気をとられながら線路を何度か渡ってると、「アレ!? またここに戻って来た」みたいなことになりがちな街だなとずっと思っていて。好きな街なんですけど、何回行っても説明できる自信がないですね(笑い)。
−−今回のシングルをリリースしたあとはアルバムの制作に入るそうですが、ヤイコさんにとって音楽へのモチベーションを保つ秘訣(ひけつ)とは?
ギターを始めたのが18歳か19歳のときなんですけど、「私、これ一生できる!」って思った、あのビリビリときた感覚みたいなものは今でも鮮明に思い出すし、その“好きなことを最後までやりたい”という気持ちを持ち続けることを心掛けてますね。
<プロフィル>
1978年7月28日生まれ、大阪府出身。00年7月にシングル「B’coz I Love You」でメジャーデビュー。同年10月には「my sweet darlin’」をリリース。初めてハマッたポップカルチャーはゲームウォッチ。「兄がいたので、遊ぶものは兄と同じものをやったり、兄が読んでいたマンガを読んだりしていた中で、ゲームウォッチはメチャメチャはまりました。兄が外出してる間に、兄の記録を絶対に更新してやる!と思ってやって、私が1位になってると、本気の兄妹ゲンカになったりして(笑い)。それが小学校低学年のときだったと思います」と話した。
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