はじめの1巻:「CRIMSONS」 ベニザケの稚魚を擬人化 その生態を熱い少年マンガに

菅野孝典さんのマンガ「CRIMSONS(クリムゾンズ)~紅き航海者たち~」(小学館)の表紙
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菅野孝典さんのマンガ「CRIMSONS(クリムゾンズ)~紅き航海者たち~」(小学館)の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「少年サンデー超(スーパー)」(小学館)で連載、ベニザケの稚魚たちを擬人化し、その冒険を描いた菅野孝典さんのマンガ「CRIMSONS(クリムゾンズ)~紅き航海者たち~」です。

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 ベニザケの“少年”シンタロウは、クールな“少女”スズネ、太めの“少年”ミツオたちの仲間と一緒に湖で暮らしていた。しかし湖では、一番の強さを誇る先輩稚魚のタケシが率いる不良集団「暴泳族」が我が物顔で振る舞っており、シンタロウたちは窮屈な生活を強いられていた。ある日、シンタロウは「この湖を出てもっと広い世界へ出る!」と宣言。仲間と共に急流に乗って、未知の世界を目指す……という物語。

 ◇編集部からのメッセージ 「少年サンデー」編集部 武藤心平さん 「ギャグマンガ家が仕掛ける不思議なベニザケワールド」

 ベニザケの一生はとても不思議です。生まれ育った川から旅立ち、海洋を回遊しながら成長し、産卵のために故郷の川へ帰ってきます。ドラマチックなサケの産卵シーンをテレビなどでご覧になったことがある方も多いと思います。幾年にもわたる長旅と、母川の急流を遡上(そじょう)する過程で体力は極限まで消耗し、サケの体はすでにボロボロになっています。それでも卵を産むために最後の最後まで力を振り絞ります。やがて思いを果たし燃え尽きた彼らは亡骸(なきがら)となり、腐敗した肉体は川の栄養へと姿を変え、新たな生命に引き継がれます。

 そんなベニザケの生態を人間の一生になぞらえることは、幾分情緒的に過ぎるでしょうか? 作者の菅野先生とサンデー編集部は、それが情緒的かどうかはさておき、“少年マンガ的”であると考えています。仲間と共に未知の世界へ挑戦し、見果てぬ夢をかなえるために困難に立ち向かう……そんなサケたちの姿に、少年マンガならではの熱いドラマがあると信じています。どこまでも真剣で、揺るぎのないいちずな旅を、サケたちと一緒に読者の方々にも体感していただきたいと思っています。

 「CRIMSONS~紅き航海者たち~」は、ギャグマンガ家・菅野先生ならではの仕掛けが満載です。手に汗握って爆笑し、脱力しながら感動できる不思議なベニザケワールドを、ぜひ一度お手にとってご覧ください。

 なお本作は、東京海洋大学客員教授の奥山文弥先生に監修していただいており、自然科学的な裏付けも“高品質高保証”。お子様の学習意欲を駆り立てること間違いありません。また、単行本同時収録の外伝は、大人の読者を意識したつややかな仕上がりとなっています。こちらも併せてお楽しみください。

 外伝「CRIMSONS外伝~RIVER SIDE STORY~」は、カナダ人留学生クリスと日本人教授が織りなす恋物語。本編にも挿入される2人のエピソードがメーンで、ベニザケは基本的に出てこない。無料コミックサイト「クラブサンデー」で連載中。

 ◇書店員の推薦文 まんが王八王子店 工藤淳さん「教授と生徒の行く末が気になる」

 子供のころに読んだ、生物の生態を題材としたマンガのような懐かしさや、サケたちがまじめにやっているがゆえのおかしさを楽しむ作品かと思いきや、それだけじゃなかった。毎回解説に登場する教授とその生徒。この2人の存在がこの作品をただの生物の生態マンガでは終わらせません。なんでしょうね、この雰囲気。むしろサケよりこの2人の行く末が気になるぐらいです。サケの産卵=死という結末の決まった物語に、不確定な要素が加わってこの話がどう展開していくかがまったく読めず、今後が楽しみな作品。

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