マンガ質問状:「血潜り林檎と金魚鉢男」 畳くさい和風な吸血鬼を考えた オンリーワンの発想に脱帽

「血潜り林檎と金魚鉢男」(アスキー・メディアワークス)1巻の表紙
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「血潜り林檎と金魚鉢男」(アスキー・メディアワークス)1巻の表紙

 話題のマンガの魅力を担当編集が語る「マンガ質問状」。今回は、吸血鬼「金魚鉢男」と吸血被害者を救う少女たちの闘いを描き、第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査委員会推薦作品に選ばれた阿部洋一さんのマンガ「血潜り林檎と金魚鉢男」(アスキー・メディアワークス)です。「電撃コミックジャパン」の勝見正克編集長に作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 とにかく、設定もキャラもストーリー運びもすべて独特で、まさに“オンリーワンな才能”を感じます。夏の雨上がりに、人の生き血を吸う「金魚鉢男」といわれる吸血鬼が出没するようになる。この金魚鉢男。名前の通り、頭部が金魚鉢になっていて、そこには、1匹、金魚が泳いでいる。この金魚が、人の首に吸いつき、血を吸う。吸われた者は、数分後には、自身も金魚になってしまう。それを阻止できるのは、「血潜り」と呼ばれるスクール水着の女の子のみ。見習い血潜りの林檎(りんご)は、ごく普通の男子高校生・昊介とともに、吸血被害者を救うために、血中に潜り、敵と対峙(たいじ)する! 血中の決闘シーンや、一くせも二くせもあるキャラが魅力的。また、ほぼすべての画稿をフリーハンドで描く、真っ黒なのに味のある画風も読者を引きつけます。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 阿部さんと一緒に仕事がしたくて、「なんでもいいから、読切りを描いてほしい!」と依頼したところから始まりました。当時の阿部さんは「吸血鬼モノ」を1本描きたいと思っていたそうです。しかし、誰もが思い描く、ワイングラスを持っていて、青白い顔の吸血鬼はやりたくなかった。それで、畳くさい和風な吸血鬼を考えたのです。その結果、頭が金魚鉢の吸血鬼が誕生したわけです。これなら、和風でいけると……! その発想力にはいつも脱帽します!

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 あまりにも斬新な発想に、当初は、上司や同僚から賛同を得られませんでした。どうやって、周りを納得させるか?が大変でした。実際に、ネームを描いて見せたら納得してもらえました。

 また、主要登場人物で、苺先輩という血潜りさんが出てくるのですが、彼女の脚のギプスが、登場した次の回で入れ替わっていて、これは、描き直しせざるを得ないと覚悟しました。が、阿部先生に確認したところ、「苺先輩はいいかげんな人なので、ギプスもいいかげんにしているだけ。だから、左右入れ替わっているのはあえてやっているのだ」という回答をもらい、ホッとしたのを覚えています。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 現在、無料配信中の月刊デジタルマンガ誌「電撃コミックジャパン」4月号の表紙が、「血潜り林檎と金魚鉢男」(林檎ちゃん)です。アンケートに答えていただくだけで、この絵柄の壁紙が無料でプレゼントされます。こちらもよろしくお願いします。

 また3月15日には、同じ阿部先生が描くコミックス「完全版 少女奇談まこら」4巻が発売になります。共著ながら、これが阿部先生のデビュー作ですので、気になる方は、こちらもどうぞ!

アスキー・メディアワークス 電撃コミックジャパン編集部 編集長 勝見正克

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