黒川文雄のサブカル黙示録:コピーとオリジナル

 コピーとオリジナルの違いはなんだろうか。コピーの定義は、オリジナルを模倣したものだ。しかしコピーに付加価値を付けたりすれば、オリジナルと呼べるのではないだろうか。ルイ・ヴィトンのバッグを元にしても、アレンジを加え、カラーや柄を変え、使い勝手を調整して、ブランドロゴを使わなければ、コピーではない。そもそも、多くの商品にはオリジン(起源)があるわけで、それをアレンジしたり、ヒントを得て大きく変えることで、さまざまなオリジナルが生まれる。

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 さて、今ゲーム業界で、このコピーが訴訟問題になっている。先日、グリーが自社の携帯電話用の釣りゲーム「釣り★スタ」を模倣され、著作権を侵害されたとして、ライバルのディー・エヌ・エー(DeNA)など2社にゲーム配信差し止めと計約9億4000万円の賠償を求めた訴訟の判決が東京地裁であった。地裁は著作権侵害を認め、配信差し止めと計約2億3500万円の賠償を命じたのだが、敗訴した2社は即日控訴した。

 気になる争いの内容だがかいつまんでいうと、グリーの「釣り★スタ」のシステムに対して、DeNAの「釣りゲータウン2」のサカナがヒットしたときの表示システムが酷似しているというもの。ゲームファンならいうまでもないが「ゲームソフトの一部が、他のゲームの仕様や表示が似ている」というのはよくある話で、それが訴訟になるところが両社の関係を物語っている。個人的には長期化して最高裁にもつれるのはもちろん、米国のアップルと韓国のサムスンのように互いの商品の訴訟合戦になる可能性すらあると思っている。

 一つ触れておきたいのは「コピーは悪」とは、必ずしもいえないことだ。音楽の世界では、どんなスーパースターでも、最初はモノマネから始まる。私の世代でいえばスーパーギタリストといえば、エリック・クラプトンやジェフ・ベックなのだが、彼らも有名なブルースギタリストのプレーを見て聴いてコピーをすることで自らのオリジナルスタイルを築き上げたという。始まりはオリジナルのコピーかもしれないが、最終的には世界を熱狂させるオリジナル性を生みだしたわけで、今活躍してるミュージシャンたちは、クラプトンやベックら著名なスーパースターを知っていて「まねたことはない」という人は皆無だろう。

 コピーでも完全なオリジナルに昇華させた商品、作品に異論はないと思うが、「改良を重ねて完成の途中にあるものはどうか」といえばその判断は難しいし、それはオリジナルの定義をどこに求めるかにもかかわってくる。

 裁判では「グリーのオリジナルゲームの仕様をDeNAがコピーをしたか否か」ということが問われているわけで、そこは司法の判断に委ねるしかない。しかし、そのオリジナルの定義はもっと深いところにあり、今回の裁判の決着とは全く関係がないことを理解する必要がある。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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