黒川文雄のサブカル黙示録:ファストファッションとソーシャルゲーム

 3月16日、ユニクロ銀座店がオープンしました。同店の売り場としては世界最大の面積で、銀座の一等地でビル1棟(12フロア)を丸ごと占めたことで話題をさらいました。また店舗スタッフも500人以上を用意しており、100人程度が外国人スタッフだそうです。

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 銀座には、アバクロンビー&フィッチ 、ZARA、H&M、FOREVER21など、世界を代表するファストファッションのブランドがそろっています。ファストファションですが、日本語に訳すと「早い流行服」となりそうです。簡単に言えば、有名デザイナー系のリリースされたファッションを短いタームでうまく取り込んでアレンジし、安価に発売するスキームになります。世界的にその流れは顕著で、世界中のユーザーに売ることを前提にした部材の大量購入、製造で安価にブランド風の服を調達することで成り立っています。

 すっかり世界的なブランドになりましたが、知人の店舗管理系のマネジャーは「ユニクロの下着のTシャツの色合いは真っ白過ぎる。やはり昔ながらのアメリカ系のブランドのほうが、素材感のある白でカッコよくていい」と言っていました。プロならではのこだわりですが、そのニュアンスは分かります。実用には良いが、純粋なファッションアイテムとしてはバリューが落ちるといいたいのでしょう。

 ゲームなどエンタメの世界も似たようなものです。ゲームも個人を対象にした娯楽ですので、感覚や嗜好(しこう)は異なります。高額な開発費を費やしたゲームが大手のブランドなら、手軽に遊べる「ソーシャルゲーム」は、ファストファッションのブランドといえるでしょう。ソーシャルゲームもファストファッションのブランドも、安く開発し、大量に売る(普及する)のを目的にしているため、多くの人に広がるというのは共通しています。

 ファッションの世界も、ゲームの世界もたくさんの選択肢の中から選べる環境にあることは素晴らしいことなのですが、本当にカッコイイものは、その道のプロによって研究されたもので、デザイナー、パタンナーのこだわりぬいた1ミリ単位のデザインに集約されるものと思います。

 もちろんゲームも同じです。緻密(ちみつ)に考えられたエンタメ性、プレーヤーのことを考えた操作性や演出だからこそ、多くのファンの支持を得て、ここまでの産業に成長したのでしょう。ただ今のソーシャルゲームは、家庭用ゲーム機からの人気タイトルの移植が多く、人気ゲームをコピーしていると見られてもおかしくない作品も目につきます。

 ユニクロが世界的なブランドになったように、ソーシャルゲームの中から、本当に面白いコンテンツが出てくることに期待しているのですが……。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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