はじめの1巻:「34歳無職さん」 新たな“萌え”の形? 実体験に基づく女性の無職生活

いけだたかしさんのマンガ「34歳無職さん」(メディアファクトリー)1巻の表紙
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いけだたかしさんのマンガ「34歳無職さん」(メディアファクトリー)1巻の表紙

 1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、「月刊コミックFLAPPER(フラッパー)」(メディアファクトリー)で連載、34歳で無職となった女性が送る気ままな日々を描いた、いけだたかしさんのマンガ「34歳無職さん」です。

ウナギノボリ

 アパートで1人暮らしをするある女性。彼女は勤め先がなくなった後、「いろいろ思うところがあって」という理由で1年間、なにもせずにいようと決め、現在は無職だ。朝、ゴミを出し、食事を作って食べ、洗濯、掃除。そしてチラシを見て自転車でスーパーに行く。自堕落になることなくきちんとした生活を送っているが、時には寝ぼうや衝動買いをしてしまうことも……。

 ◇編集部からのメッセージ コミックフラッパー編集部「急がず、焦らず、働かずなアラサー女子の日常」

 作者がまだマンガの仕事があまり忙しくなかった頃、ネットの某お絵描き掲示板に1人暮らしをする女性の日常を切り取った1コママンガを投稿しました。それが当時34歳で(ほぼ)無職だった作者自身をモデルにした「34歳無職さん」誕生の瞬間でした。

 そんなわけで、作中の無職さんの生活は作者の実体験を基に描かれているので、かなり現実的。「ゴミ出しの無い日はついつい寝過ぎる」「お金を使わなくても長居できる本屋で暇つぶし」などなど、無職生活ならではの“あるあるネタ”がふんだんに詰まっています。

 それにしても、34歳で無職ともなればのっぴきならない状況に違いないのですが、彼女からは焦りやあきらめはまったく感じられません。むしろ、無職だからこそ普段の生活はきちんとしようする姿勢と、そうは思いながらも時々誘惑に負けてしまう姿には愛らしさすら感じてしまいます。作者いわく、「34歳無職さん」は「新たな“萌え”の形である!」とのこと。適度にだらしないという“アラサー女子”の新たな魅力も作品の見どころと言えるでしょう。

 それでは最後に、読めばきっとアナタも働きたくなくなる(!?)、「34歳無職さん」を今後ともよろしくお願いします!

 ◇書店員の推薦文 伊吉書店 中村深雪さん 「自分の姿を重ね、物思いにふけってしまう」

 1人で働いて社会に参加すること、家庭を持ち家族を守り生活すること、そのどちらでもない、「34歳無職さん」。生活のすべてが自分のためだけのぜいたくな時間。主人公である彼女の名前が出てこないので、つい自分の姿を重ねてしまい、自分がもしこうなったら何をしようと物思いにふけってしまいますね。こんなふうにゆったりしながらもきっちりした時間を持ってみたいと少しあこがれますが、彼女がこの特別な空白の時間を過ごすことにしたきっかけの「いろいろ思う所」が気になったりもしますね。

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