注目映画紹介:「ベイビーズ−いのちのちから−」 赤ちゃんの問題を静かに問いかける

(C)2010 Chez Wam/Thomas Balmes
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(C)2010 Chez Wam/Thomas Balmes

 ナミビア、モンゴル、日本、アメリカ、地球上の四つの地点での、赤ちゃんの1年間を追ったドキュメンタリー作「ベイビーズ−いのちのちから−」が5日公開された。ナレーションや字幕は一切なし。こちらもまっさらな気持ちで見ることができ、想像力が刺激される。

ウナギノボリ

 09年4月、4人の赤ちゃんが誕生した。ナミビアのポニジャオ、モンゴルのバヤルジャルガル、日本のマリ、アメリカのハティ。4人は家族の愛に包まれて育っていく。成長した赤ちゃんはやがて大地を踏みしめる。 

 映像は、大きなおなかからオギャーッと生まれて、すくすく育つ赤ちゃんをつぶさにとらえている。言語の習得の基礎となっている赤ちゃんのおしゃべり(喃語=なんご)や、目を見開いて好奇心いっぱいになっている姿など、本来誰もが持っている人間の力をまざまざと見せつける。

 4人の赤ちゃんを並列に、冷静に映し出した視点で、そこに見えてくるものは環境の対比だ。ナミビアやモンゴルで大自然とともに育つ子どもと、人工的なものに囲まれて育つ先進国の子ども。赤ちゃん(厳密には親だが)までをも消費社会に巻き込んでいる日本のおもちゃ売り場を、こうした視点で見せられると、いろいろと考えさせられる。本当に子どもに必要なものは何か。一つ、はっきりしているのは、子どもは生まれる環境を選べないということ。可愛いだけの映画ではなかった。映画はさまざまな問題を静かに問いかけてくる。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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