真木よう子：「私にしかできない芝居を」　映画「外事警察」に出演

　女優の真木よう子さんが、俳優の渡部篤郎さん主演で6月2日に公開される映画「外事警察　その男に騙されるな」（堀切園健太郎監督）に出演している。再婚し、夫と娘と幸せに暮らしていながら、ある出来事をきっかけに国際的なテロ事件にスパイとして巻き込まれていく主婦・奥田果織を演じる真木さんは、芝居に対し「真木よう子にしかできないものをやりたい」とあふれるような熱意で取り組んでいる。そんな真木さんに役どころや演技について聞いた。（毎日新聞デジタル）

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　真木さん演じる果織は、前夫の蒸発で多額の借金を背負い、一人娘の琴美を施設に預けて暮らしていたが、来日した韓国人の正秀と再婚して琴美を引き取って3人で暮らしている。しかし琴美は5歳になる今も言葉を話せず、その理由は父親を失ったショックからといわれている……という役どころ。

　08年に結婚、09年に第1子を出産し、自身も母親になった真木さんは、果織が過去に犯した過ちから「決して母親として尊敬できる人間ではないけれど、最低な人間だとは思っていない。寄り添える何かがあるからやろうと思った」という。また「大なり小なり母親というのは、ちゃんと子どもに向き合って育児をしていれば、子どもにいえない一つや二つの隠しごとはあると思う」と話す。

　そして「（果織は）完全な悪人ではなかったし、同じ母親として理解できる部分がある。それを自分がやることによってもっと母親たちに共感できる役にしようという思いでやってました」と語る。「子どもと向き合って育児を頑張っている母親たちにぜひ見てもらって、スカッとするとか、希望を感じるとか、なんでもいいけれど、なにかプラスのものを母親たちに与えられたらいいなと思って、それをずっと心がけてやっていました。だから本当に1シーン、1シーン、一瞬たりとも気を抜きたくなくて、常に本物の気持ちでやっていきたいなと思った。そう思わせてくれる役でした」と振り返った。

　淡々と、しかし熱を込めて語る真木さんは、01年に映画デビューし、06年に山路ふみ子映画賞新人女優賞を受賞するなど実力派女優として知られる。だが、演技をするときに必ずやることは「ないですね」という。「台本を読んで、彼女（キャラクター）の気持ちの流れや、理解できない部分があったら、どうしてこういう行動を取るのっていう根っこの部分を考える作業をしたりとか。それぐらい」とさらりと話した。「やっぱり現場に行かないと分からないことがたくさんあるし、相手の俳優さんと向き合わないと分からないこと、そこで初めて気づいたり、変わったりすることもあるから。現場に入って衣装を着て、メークをして、相手と向き合ってから作り上げる作業ですね」とそのライブ感を楽しんでいるようだ。

　また「その役の一番のよき理解者でありたい」といい、「（役が）人を殺すにしたって、役を形成する人間として、私がその根底にある彼女（キャラクター）の人間的なところで、正当化してあげなきゃいけないんですよね。その作業が苦じゃないキャラクターというか。自分が一番彼女のことを分かって、味方でありたいっていうふうに思えるキャラクターじゃないとやりたくないんです」ときっぱり。女優としての欲望は？と聞くと、「けっこうある方だと思う。だいたいどの作品に出ても満足しないし、自分のダメなところしか見つからない。だからこそ次はああしてやろう、こうしてやろうと思える。あとは誰にもできないもの、私にしかできないものをやりたいと思うし、いろんな役をやってみたいし。それに向けて頑張ろうと思っているところです」と笑顔を見せた。

　次回は、映画の撮影現場でのエピソードなどについて聞く。

　◇プロフィル

　まき・ようこ。1982年10月15日生まれ。千葉県出身。01年に「DRUG」で映画デビューし、06年に「ベロニカは死ぬことにした」で映画初主演した。同年、映画「ゆれる」で第30回山路ふみ子映画賞新人女優賞を受賞。07年から放送されたテレビドラマ「SP　警視庁警備部警護課第四係」（フジテレビ系）で紅一点のSP・笹本絵里を演じて人気を博し、08年のオムニバス形式の連続ドラマ「週刊真木よう子」（テレビ東京系）で主演したほか、10年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で、福山雅治さん演じる坂本龍馬の妻・お龍を演じた。最近のおもな作品にテレビドラマ「カレ、夫、男友達」（11年、NHK）、「運命の人」（12年、TBS系）、映画「モテキ」「指輪をはめたい」「源氏物語　千年の謎」（いずれも11年）がある。