いよいよあさって21日、九州南部から東北南部までの太平洋側の広い地域で、8300万人が金環日食を観測できる。2人組ユニット「DREAMS COME TRUE」が90年にこの日の金環日食について「時間旅行」で歌ったことでも知られる天体ショーだ。金環日食が見られない地域でも、太陽が最大80~90%欠ける部分日食を見ることができる。これから思い立っても、正しい観測道具を準備し、注意すべきことを確認しておけば、自宅付近で観測が可能だ。前日までの準備と当日の観測方法、注意事項を、「日本科学未来館」(東京都江東区)の科学コミュニケーター、三ツ橋知沙さんに聞いた。
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日食は、太陽が月にさえぎられ、欠けて見える現象。金環日食は月にさえぎられる部分が太陽の中央部分のみとなり、残った部分がリングのように見える現象だ。国内で金環日食が観測できるのは87年9月の沖縄以来25年ぶりで、東京では173年ぶり、大阪では282年ぶり、名古屋では932年ぶりと言われている。国内で見られる次の金環日食は、18年後の30年に北海道だ。そして東京での次回は300年後の予定。
三ツ橋さんはその魅力を「太陽と月が重なる現象は、私たちが操作できないこと。自然の偶然によって起こる現象を、楽しんでほしい。また今回は、わざわざどこかに行かなくても、みんなが自分のいる場所で日食を楽しめる。日食という現象を全国民で楽しめるまたとない機会です。楽しんでほしいですね」と話している。
「日食を見たい」と思ったら、まず自分が住んでいる地域で日食が始まる時間、金環日食が始まる時間(または食が最大になる時間)を国立天文台のホームページの「日食予報」などで確認しよう。予報の正確性は、三ツ橋さんによると「ほぼ100%と思っていただいて大丈夫です」という。
次に、日食を見られる安全な場所を探しておこう。三ツ橋さんは「(朝は)まだ真上に太陽が上がっていません。東の空にビルがない場所、朝、太陽が見える位置を確認してください」とのこと。ベストは前日の20日朝、自分が観測したい時間に実際に歩いて探しておくことだ。
金環日食、部分日食にかかわらず、観察のときに太陽を直接見てはいけない。日食グラスを購入すること。日食グラスは、消費者庁も注意を促しているが観測に不適切な商品も出回っているため、注意が必要だ。入手した日食グラスを使って室内の蛍光灯を見た時に形がはっきりと分かるものや、LEDライトにかざした際にひび割れや穴が確認できる製品は危険。目を痛め、時には視力低下や失明の危険もある。「2012年金環日食委員会」のホームページには「明らかに危険な製品の見分け方」というページがある。手に入れた日食グラスが安全かどうか、必ず事前に確認しよう。また観測の際は、つばのある帽子をかぶるのが望ましい。
日食グラスが入手できない場合は、木漏れ日のほか、テレホンカードやプリペイドカードの穴を通した太陽の光で、地面や壁などに映る日食の様子を観察できる。「紙に穴を開けるだけで見られますし、穴の形は何でもいいし何個でも大丈夫。(穴の大きさは)ほどほどに小さければ(観測できます)。麦わら帽子、クラッカーの穴(に通した太陽の光)も、すべて日食の形になります」という。観察したい時間に木漏れ日のできる場所や、代用できるものを集めて準備しておこう。
観測の際は正しい日食グラスを使おう。望遠鏡でのぞく、黒い下敷きをかざして見る、サングラスで見る、カメラのフィルム越しに見る、すすガラス越しに見るのは危険。過去に用いられた方法もあるが、現在は危険性が指摘されている。
日食の始まりから終わりまでは、地域差があるものの、約3時間程度。三ツ橋さんは「3時間は、太陽に月がかかって通り過ぎるまでの時間。見てほしいのは金環日食が始まる少し前からです。東京で(金環日食)は7時31分59秒~同37分00秒。その時間は外さないでほしいですね」といい、日食グラスで見る際は「その間、ずっと見ていると目によくないので、休憩しながら見てください。2~3分程度見たら目を休めて」とアドバイスする。部分日食となる地域も食が最大になるタイミングに注目してみよう。
日食グラスで観測できる太陽の大きさは、手に五円玉を持って腕を最も遠くまで伸ばした際の穴に収まる程度だ。金環日食の始まりには光の輪がビーズのような粒に見える「ベイリー・ビーズ」という現象が見られ、徐々に輪の形が変わっていく様子が確認できる。観測する地域によってリングの左上が広く、右下が狭く見えるなど、形が異なり、ベイリー・ビーズが長く続く地域もある。
また金環日食が見られるとされる「金環日食帯」(国立天文台ホームページ参照)の端にある地域について三ツ橋さんは「金環に見える地域かどうか、NASAと国立天文台で異なるデータが出ているので、際に住んでいる方はそのあたりにも注目してください」と話している。
日食が見られたら、写真を撮りたくなるが「専用のフィルターを買ってカメラに設置して撮らないといけないですね。でもフィルターがかかっていないところからうっかり直接太陽を見てしまうといけないので、無理をしないでください」という。安全のため、撮影に挑戦するのは避けた方がいいだろう。木漏れ日などで地面に映った日食の撮影は、もちろん可能だ。
気になるのは当日の天気だが、日食の観察は天気にどれぐらい左右されるのだろうか。「太陽が透ける程度の雲であれば、見られます。太陽の輪郭が分からないぐらい雲が厚いと、無理ですね」という。日本で09年に部分日食が観測できたが、その際は「曇っている中でもちゃんと部分になっているのが分かりました。薄曇りぐらいなら見られると思います」と話している。
日食の時間帯にどうしても外に出られない場合や金環日食が見られない地域からは、動画配信サイト「YouTube」の国立天文台チャンネルでライブ配信が行われるのでチェックしてみよう。また、前日の20日午後1時45分から日本科学未来館で行われる「サイエンス・ミニトーク」で、金環日食の見方を説明している。