ONE-UP:国産ブラウザーゲームで世界へ挑戦

ONE-UPの中元志都也社長
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ONE-UPの中元志都也社長

 登録会員240万人を誇る「ブラウザ三国志」や、戦国時代を舞台にした「戦国IXA(イクサ)」などのブラウザーゲームが人気を博している。両タイトルを開発しているのが、ゲーム会社の「ONE-UP」(東京都中央区)だ。携帯電話のソーシャルゲームが市場を席巻して話題になる中、PC向けの国産ブラウザーゲームを主力に成長した同社の戦略を追った。(毎日新聞デジタル)

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 06年に設立されたONE-UPは、現在の社名へ変更をした08年にPCオンラインゲームの開発を中心に手掛けるようになり、ブラウザーゲーム「ブラウザ三国志」のヒットでその名をとどろかせた。その後も「戦国IXA(イクサ)」や、「みんなで牧場物語」などを手掛けるなどブラウザーゲームの開発に強みを持つ。12年からは、開発だけでなく、新たに販売(パブリッシャー)の事業に乗り出し、夏には新作ゲームを発表する予定だ。

 PCのオンラインゲームでは、ここ2、3年で急速にブラウザーゲームが普及している。それまではゲームソフトをダウンロードする形態が主流だったが、ブラウザーゲームは、ウェブを見るためのソフト「ブラウザー」を使うためダウンロードは不要で、気軽に楽しめる。以前はCGの描写が荒いなどといった表現力が弱点だったが、技術の進歩で画質が飛躍的に向上している。

 「ブラウザ三国志」の成功について、ONE-UPの中元志都也(しずや)社長は「同じタイプのゲームがなく、パイオニア(開拓者)になったのが大きいですね」と開発当時を振り返る。当時のオンラインゲームは、ソフトのダウンロードの手間もさることながら、一度で数時間以上プレーするのが普通で、PCにも一定の知識が必要だった。ところがブラウザーゲームは、クリック一つでゲームが始まり、十数分で終わる手軽さが受け、インターネットの会員制交流サイト(SNS)の利用者に支持された。「ブラウザ三国志」は既にサービス開始から数年たつが、いまだに多くのファンが楽しんでいる。

 12年から国内でオンラインゲームのパブリッシャー事業を手掛ける予定のONE-UPだが、海外では10年からライセンスビジネスを展開済みだ。「ブラウザ三国志」と「みんなで牧場物語」の2タイトルで、タイやシンガポールなど東南アジアを中心に9カ国・地域でサービスをしている。現在、ソーシャルゲームで成長した日本の企業が海外進出を進めており、一見すると同じ展開に見えるが、ONE-UPはPCのブラウザーゲームに特化しているため、他社と大きく異なる。

 ブラウザーゲームに特化した異色の海外展開について、中元社長は「東南アジアの市場を考えるとPCで展開する方が有利と見ています。町のネットカフェの小さなスペースに、何人もの学生が集まって、同じPCの画面を食い入るように見て数時間遊んでいるんです」と明かす。日本ではオンラインゲームというと1人でプレーするのが常識だが、東南アジアでは、日本で「ファミコン」ブームが起きた80年代のような雰囲気という。

 海外展開を前提にしたゲームを開発するONE-UPは、全社員の3分の1を占める外国籍の社員を、海外渉外担当にするのでなく開発メンバーに加えている。提携した海外の会社と連絡を取りながら、要望を開発に反映させるためだ。言葉の問題やサイトの作り込みはもちろん、ゲームの世界観にも及んでおり、例えば、イスラム教圏では豚肉の食用がタブーという戒律に配慮し、ゲーム中に生物のブタは出すが、「切り身」のアイテムとしては出していないという。

 ONE-UPの12年3月期の決算は、売上高約15億円、営業利益約4億8000万円で、現在は株式公開を視野に入れている。事業の主力はブラウザーゲームの開発だが、一方でソーシャルゲームの開発も進めているといい、中元社長は「テレビ局やディズニー、ヤマダ電機が参入した通り、ソーシャルゲームの解釈の仕方は広がるし、市場も大きくなる」と展望する。異色のゲーム制作会社の今後に注目だ。

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