NHNジャパンが運営するスマートフォン(スマホ)向け無料通話・チャットアプリ「LINE」は、7月で世界のユーザーが5000万人を突破、国内でも2000万人のユーザーが利用する爆発的な人気を博している。年内にユーザー1億人を目標に掲げる事業戦略室の矢嶋聡マネジャーは、「今までインターネットに触れていない人が数多くいるスマホにサービスを特化すれば、世界を狙えると感じた」と熱く語る。アプリ開発のためにリサーチしたのは「女子高生や女子大生、主婦」だという。開発のこだわりや思いを聞き、人気の理由を探った。(毎日新聞デジタル)
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「LINE」は、ユーザー同士なら全世界で通信キャリアを問わず、無料で音声通話やチャット(トーク)が楽しめるコミュニケーションアプリ。初期設定が済めば、アカウントの作成もログインも必要なくすぐに利用できるという手軽さと、スマホに登録されている電話帳と同期させられるなど、スマホに特化した利便性が魅力だ。日本で100万人近いユーザーが集まった段階で、タレントのベッキーさんが出演したCMが放送されてさらに認知度を上げ、口コミで利用者が広がった。絵文字や顔文字、写真なども送れるチャットで、特に人気を集めているのが、絵文字よりも大きなイラストを送れる「スタンプ」機能で、無料のスタンプもあるが、「ハローキティ」や「スヌーピー」など人気キャラクターを使った有料スタンプが充実している。
矢嶋さんは、世界中で使われている同種のサービスの中でも、コミュニケーションとカメラに着目し、「フェイスブックやツイッターが人気だが、もっとプライベートでつながれるツールがあればと思った」と開発のきっかけを話した。アプリ名の由来も「デバイスや人の壁を越えて『一本の線』でつながるイメージを表現した」と明かした。人気の理由については「東日本大震災の影響もあり、ツイッターのような不特定多数ではなく、身近な人々とのコミュニケーションに目が向けられたからではないか」と分析する。
人気となっているスタンプの中には、万人受けしそうな有名キャラクターやモチーフに交じって、どこかシュールなオリジナルキャラクターが存在するが、矢嶋さんは女子高生や女子大生、主婦ら女性にどういうキャラクターが受けるのかをリサーチしたといい、「女子高生はブラックユーモアのある『キモカワ』キャラが高評価で、個人的には『いいのかな?』と思ったが、今後はスマホでもメーンプレーヤーになることを考え、あえてウイットに富んだものを(オリジナルキャラに)選んだ」と語った。ターゲットも明確に10~20代の女性だといい、「スタンプは携帯でいう『デコメ』。トークのレスポンスの速さ、スタンプの大きさのバランスなどは、ターゲットにメールより早く簡単に使えると思ってもらうために、特にこだわりました」と自信をのぞかせる。
スタンプのほかにも、コミュニケーションアプリとしての質を向上するため、ユーザーのプライベートゾーンとなるトーク画面には「広告バナーを出さない」、企業公式アカウントには、ユーザーに嫌われないように「週1回以上メッセージを送らない」、「クーポンなど実益がある情報を心がける」などと決めている。いわゆる“出会い系”ツールに使用されているケースが指摘されているが、「総務省からのガイドラインに沿ってユーザー側に情報を明示し、同意を得た上で、ユーザーに判断を委ねるのが前提。掲示板でのID交換などについては、クレームを入れて対応している」という。
今後は、LINEの新機能として、自分の近況を表示する「ホーム」、友人の近況がリアルタイムで分かる「タイムライン」を追加し、ソーシャルネットワーク性を強化するほか、ゲームやコンテンツを提供するプラットホーム展開も予定している。よくフェイスブックと比較されるというが、矢嶋さんは「LINEもユーザー10億人というサービス規模を目指したいが、情報収集はフェイスブック、密にコミュニケーションを取るのはLINEと、使い分けができると考えている」と語った。年内ユーザー1億人を達成するためには現在普及していない米国や中国などを狙っていくといい、矢嶋さんは「どうアプローチしていくかが挑戦でもあり楽しみでもある」と意気込んでいた。