桜 稲垣早希の補完計画:「ピーチガール」 女子のリアルが詰まっています

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 アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のヒロイン・アスカの物まねで知られるお笑い芸人の桜 稲垣早希さん。「エヴァ」だけでなくさまざまなアニメやマンガ、ゲームが大好きという稲垣さんが、熱い思いを語ります。(毎月25日更新)

ウナギノボリ

 こんにちは。今回は私が学生のころハマって読んでた少女マンガ「ピーチガール」です。これは人気作品なので女子だけにとどまらず男子で読んでいる人もたくさんいたんじゃないかな~と思います。

 当時、ガングロや汚ギャル、ルーズソックス、厚底ブーツなどがはやっていた時期で私もすこ~しだけルーズソックスはいていたのを思い出します。ピーチガールの主人公のモモは、中身は普通の女の子なのに肌がもともと地黒で、髪の毛も水泳で傷んで茶色くなっているせいでギャルに見られて誤解されるという可哀想な女の子です。

 少女マンガによくある、「地味な女の子がクラスで一番のイケメン男子に好かれて恋が始まる……」というものと逆です。表紙を見たら「え? この派手な子が主人公?」って思います。この作品で学ぶことは「人は見た目で判断してはいけません」ということですね。当たり前なんですがなかなかできないものです。

 モモなんて見た目が派手でも中身はすごく純粋なんです。で、この作品にかかせないキャラがさえです。さえはモモと正反対で色白できゃしゃで守ってあげたくなるタイプ。でも性格はこれまたわっるいのです。「モモのものは自分のもの♪」とジャイアンばりにわがまま全開のさえにモモは振り回されまくります。モモが買おうとしていたかばんも、次の日さえが買って学校に持ってきていたりします。そしてモモの彼氏にまで魔の手が!

 見た目が派手で遊んでそうに見えるモモと、か弱くて純情に見えるさえとくらべたら、いつも信用されるのはさえのほうです。それでモモはいじめにあってしまったり、それ以上のトラブルにどんどん巻き込まれていくのです。

 で、ここで救世主登場です! モモのことをひそかにずっと好きだった岡安です。この岡安が物語のかなりの重要人物です。女子に大人気でいろんな子と付き合って、一見遊び人にみえますがなかなか心から人を好きになれないという困った人です。この岡安にもモモはぐるんぐるんに振り回されるのです。とにかくモモの彼氏を含め、この4人の仲はもう見てられないくらい複雑になります。一人一人の立場になって考えたらどれが正義かわからなくなります。

 ですが、私が好きなキャラはもちろんさえです♪ もともと強気で性格がゆがんでいる女キャラが大好きなのです。なんかそういう子って自分の欲に素直に行動できてかっこいいです。あっ、エヴァのアスカもそうですね。なので、そういうたぐいでは、さえはもう最高に底意地悪い大好きキャラです。いろんな手を使ってモモを陥れようとします。可愛すぎるさえは芸能界からもお呼びがかかり、モデルデビューしたり絶好調です! でもさえも完璧ではないのでたまに失敗して自分の首をしめます。その時の変わり様がおもしろいです。あんなに自信満々だったさえなのに、存在感が一気になくなります。そういうところも愛すべきポイントですね~。

 さて、モモVSさえの戦いはずっと続いていくのですが、こういう争いってマンガほど大げさでないにしろ、日常で身近にありますよね。私も女子校出身で女子の間のトラブルなんて日常茶飯事だったのですごく共感しました。女子の怖さは知ってますからこのマンガは余計にぞぞぞ……とします。

 女子ってすごく不思議な生き物です。たとえば、女子はなぜか一緒にトイレに行きたがりますよね。私も学生のころ、休み時間のチャイムが鳴ったらまず友達から「さきちゃんトイレいこう~」と誘われていました。トイレに誘われると、今自分はトイレをしたくなくてもなんとなくついて行くのが暗黙の決まりでした。トイレなんてもんは生理現象ですから、行きたくなるタイミングは基本人それぞれです。

 で、この行動にいつも納得いかなかった私は、ある日ついに「んーっと、私今トイレ行きたくいから○○ちゃん行っておいで」と言いました。するとその子は「えっ!?」と衝撃を受けた顔をしてしばらく理解できないような感じでした。そして結局他の子を誘ってトイレに行っていました。

 多分その子からしたらトイレという用事は二の次で「一緒に行く」「1人で行きたくない」というのが大事だったのだと思います。常に友達の多い自分でいたい。はみ出してるなんて周りに一瞬でも思われたくない。洗面所で1人で手を洗っていると、自分は人気ないのだと思われるかもしれない……という意識がうっすらあるからなのかと大人になって思います。でもそこまでして装う友達の輪には違和感です。その時から私はトイレに誘われなくなったのですが、その子とは少し話す回数が減りました。

 不思議ですよね女子って。男子はきっと理解できないのだと思います。女子が3人集まればいつの間にか2対1になったりするし、太ってる子に「全然太ってないよ~」とかうそつくし。まったく複雑で不思議な生き物です。昨日まで仲の良かった子と小さなきっかけですごく仲が悪くなったり。好きな人がかぶるなんて大変ですよ。だから「あんまり積極的に恋したくないな~」と思っていました。そんな女子のリアルがこのピーチガールにはぎゅっと詰まっています。

 歯がゆさ満点の展開! さらに衝撃の結末。最後にモモは誰を選ぶのか!? 少女マンガでもこのピーチガールは波瀾(はらん)万丈度がすごいですよ。学生時代は読み終わったらハラハラドキドキしすぎて体力を大幅に消耗しちゃっていました。でも今はお仕事に夢中な日々で、そういう恋の刺激なんてあまりないので、また読み直してハラハラドキドキしたいと思います。

 ◇プロフィル

 桜 稲垣早希(さくら いながき・さき)=1983年、神戸市生まれ。07年2月に、お笑いコンビ「桜」を結成。07年の「M−1グランプリ」で3回戦に進出するなど活躍していたが、09年末に相方がコンビを卒業し、ピン芸人として活動。アニメ「エヴァンゲリオン」のヒロイン、アスカの物まねで知られ、バラエティー番組「ロケみつ」(毎日放送)でブレーク。「R−1ぐらんぷり」で2年連続で準決勝に進出したほか、「吉本べっぴんランキング」でも3年連続で2位を獲得している。最近ではバラエティー番組などでナレーションもこなすなど、芸の幅を広げている。

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