テッド:マクファーレン監督に聞く 製作、脚本、声優など活躍「何かを生み出すのが好きなんだ」

「テッド」の製作秘話を語ったセス・マクファーレン監督 (c)Universal Pictures
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「テッド」の製作秘話を語ったセス・マクファーレン監督 (c)Universal Pictures

 いじめられっ子の男の子ジャックがクリスマスプレゼントにもらったテディベアと本当の友だちになろうと神に祈り、魂が宿ったという奇跡から27年……。テッドは可愛らしい外見はそのままに下品な言葉を連発する中年に育っていた。中年男になったジャック(マーク・ウォルバーグさん)とテッドの“オトナ”の交流を描いた奇想天外な設定でヒット中の米コメディー映画「テッド」で、初監督した以外に、製作や共同脚本、テッドの声まで担当するなど八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せているセス・マクファーレン監督に話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 −−どうして自分で声の出演をしようと決めたんですか? それに初めての監督作だというのに、なぜこんなにたくさんの役割を引き受けたんでしょうか?

 そんなにたくさんとは思えないな、だって、僕の出身メディア(テレビ)では、ほんの22分のアニメを作るだけでも、何役もこなさなくちゃならないからね。たくさんの異なった分野を引き受けた(製作期間の)9カ月間だった。でも、とてもためになったよ。自分で何かを生み出すのが好きなんだ。慣れているしね、(テレビ番組の)「ファミリー・ガイ」で長年やってきたことだからね。それに、このキャラクターをどうしたいか、はっきり分かっていたし。

 −−この映画を作るにあたって、一番大変だったことは?

 最も大きな困難は基礎を学ぶことだった。僕がやってきたアニメでは、カメラのアングルの数なんか関係なかった。八つの違ったアングルを撮ってから選ぶ必要はなかったんだ。あるシーンの絵コンテを描くとき必要なのは、一つのアングルだけだし、アニメーションができた結果たどり着くのも、そのアングルだ。ワイドショットに画面をカットすることはできないし、「じゃあ、ここでクロースアップにしよう」ともいえない。無理なんだ。だから実写に必要な標準的な撮影のABCを学ぶのは、実は、僕にとって目新しいことだった。皮肉なことに、映画ではもっと複雑な箇所、例えば特殊効果の融合なんかは、どちらかというとしっくりきた。だってアニメの世界から来たばかりだからね。問題なのは、たとえば「トラディショナルオーバー」と「フレンチオーバー」の違いは何かとか。こっちが「カウボーイショット」と呼ばれ、こっちは「フィフティフィフティ」といって、2人の人物が向かい合っている場面を横顔から撮るショットだとかね。そんな基本が妙に大変だったね。まるで映画入門講座の1年生のようだっだ。

 −−ウォルバーグさんが演じる主人公がペラペラまくしたてる女の子の名前は、彼の話では57個だそうです。ご自身の知り合いの名前を入れたりしましたか?

 ついこの前、誰かに聞かれたよ、あの名前の中で自分がデートしたことのあるのは何個あるかってね。たぶん、一つしかないよ。

 −−どれですか?

 ブリタニーとはデートしたことがある。

 −−あれだけの名前を思いつくには本を参考にしたんですか、それとも純粋にイマジネーション?

 これは単にみんなでブレーンストーミングしただけだよ。

 −−子供時代についてお聞きします。魔法や呪いといったものに興味があったことは?

 おそらく、その反対だったと思うよ。科学や、合理的な物事の成り立ちの方にはるかに興味があった。あまり迷信深い子供じゃなかったね。だからこの映画は、僕が魔法の力を信じているかを伝える映画じゃないんだ。大人のおとぎ話だよ。

 −−この映画に、あなたの手がけたテレビ番組「ファミリー・ガイ」のキャストを、どうしてこんなにたくさん出演させたんですか?

 僕は以前に一緒に仕事をした人たちと仕事をするのが好きなんだ、彼らのリズムが分かってるからね。それに、今度の仕事を成し遂げるには、その間に、たくさん学習することがあるだろうなと思った。僕の初めての映画だし、撮影はかなり複雑な作業になるだろうから、その過程で、映画についてたくさんのことを学ばなくちゃならないと思ったんだ。そこで少し自分を楽にしてやろうと、信頼に足る人たちと仕事をしようとした。すでに信頼できることが分かってる人たちとね。

 −−どうやってノラ・ジョーンズさんの出演を説得して、クマとお手合わせするのを承知してもらったんですか。

 ノラは親友だからね。僕がリリースしたビッグバンドのアルバムでは一緒にデュエットもしているし、素晴らしいユーモアのセンスもある。彼女は確かに乗り気だったし、すべてうまくいった。それから、彼女にこの映画のタイトルソングをレコーディングしてもらったのさ。

 −−オリジナル曲ですか?

 そう、僕が頼んだ作曲家ウォルター・マーフィーと一緒に書いた曲だ。彼が作曲してくれた。それをノラに歌ってもらったんだ。

 −−あり余る才能ですね。たぶんいつか、歌の分野にも進出するつもりじゃないですか? とても素晴らしい声でした。

 あくまでも歌は楽しみだよ。これで一銭ももうけようとは思ってない。非常にいいストレス解消法だよ。

 <プロフィル>

 テレビ番組「ファミリー・ガイ」(99~01年、04年~)のクリエーターとして知られる。98年に同番組のパイロット版をFOXテレビに持ち込んで即採用され、24歳のときに業界最年少のエグゼクティブプロデューサーとなる。「ファミリー・ガイ」ではグリフィン役の声優として、エミー賞のボイス・オーバー・パフォーマンス賞を受賞。また、02年には同作でエミー賞の歌曲賞を受賞した。さらにFOXのアニメ番組「American Dad!」と「The Cleveland Show」の共同企画、制作総指揮、声優も務めている。

 また、ミュージシャンとしてもロンドンのロイヤル・アルバート・ホールとニューヨークのカーネギー・ホールのショーを満員に。デビューアルバム「Music is Better Than Words」が発売されると、iTuneのジャズ部門で11年9月27日付初登場1位を飾り、グラミー賞の最優秀トラディショナルポップボーカルアルバム賞ら2部門にノミネートされた。今年の「第85回アカデミー賞」授賞式のホスト役を務める。

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