テレビ質問状:ノンフィクションW「アカデミーを救った“消えない”映画フィルム」 白黒開発秘話

ノンフィクションW「アカデミーを救った“消えない”映画フィルム」の一場面 クレジット:Bryan Crowe/(C)A.M.P.A.S.
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ノンフィクションW「アカデミーを救った“消えない”映画フィルム」の一場面 クレジット:Bryan Crowe/(C)A.M.P.A.S.

 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。2月22日に放送される「アカデミーを救った“消えない”映画フィルム」を担当したWOWOWの映画部の須川賢一プロデューサーに番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 −−番組の概要と魅力とは?

 今、世界の映画界では撮影・編集・上映とすべての過程で、怒濤(どとう)の勢いでデジタル化が進んでいます。そんな中、昨年、映画界で権威のある米アカデミー賞で、技術貢献の功績をたたえる「アカデミー科学技術賞」に日本人の技術者の3人が受賞しました。彼らが開発したのは映画フィルム、しかも白黒。なぜこのデジタル時代に白黒フィルムが? そこから見えてくる映画界が直面している問題を、フィルムの開発秘話や、映画製作の本場ハリウッドの取材を通して迫っていく番組です。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 昨年、富士フイルムの技術者3人がアカデミー科学技術賞を受賞された記事を読んで、なぜこの時代に白黒フィルムが評価されたのか?という疑問からこの企画はスタートしました。個人的に現在、映画部という部署で映画放送権の購入などもしておりますし、振り返って学生時代は映画上映の助手としてフィルムを扱ったりしていた経験から、映画フィルムには個人的に思い入れがあるので、フィルムというメディアが我々の目の前から消えつつある今、何か番組にできればと、常に思っていました。

 −−制作中、一番に心がけたことは?

 この番組では「映画の保存」という問題を軸に番組を展開していきますが、取材を重ねるうち、映画界のデジタル化はさまざまな恩恵をもたらしてくれると同時に、「保存」という点では非常に危うい一面を抱えている、という事実に気が付きました。これは映画だけの話ではなく、デジタルに囲まれて暮らしている私たちにも切実な問題だと思われたので、急速なデジタルの流れの中で一瞬でも考えてもらうきっかけになるような番組にできるよう心がけました。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 大変なことといえば、とにかく取材の時間が短かったことです。実は当初は別の番組企画を進めていたのですが……。諸事情によりもう少し時間をかけて制作する予定だったこの企画をまず進めることになったので。また年末年始をはさんだため、思い通りにリサーチや取材が進まずとても苦労しました。でも出演していただいた方々のご協力やスタッフの尽力で、短い間ながらベストな取材ができたと思います。 

 −−番組の見どころを教えてください。

 「映画の保存」というのは、華やかなショービジネスの映画界の中ではたいそう地味な話だと、私でも思いながら作りました。出てくるのも、工場や倉庫だったり、整然と並ぶフィルム缶の山だったり、もっと細かくいうとフィルムの粒子だったり……。今思うとハリウッドスターの1人でも取材しておけばよかったですが……。とはいえ普段は目にすることのないハリウッドやフィルム業界の裏側を見ることができる、というのが見どころかと思います。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 「映画の保存」は映画業界だけにとどまる話ではなく、映画を好きな一般の方々にも考えてもらいたいテーマであるので、ぜひご覧になってください。

 WOWOW 映画部 プロデューサー 須川賢一

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