「フォレスト・ガンプ/一期一会」(94年)でアカデミー賞監督賞に輝いたロバート・ゼメキス監督が、やはりオスカー俳優のデンゼル・ワシントンさん主演で製作した映画「フライト」が全国で公開された。作品のPRのため、ゼメキス監督とワシントンさんらがこのほど来日。ゼメキス監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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監督にとって今作は、トム・ハンクスさん主演の「キャスト・アウェイ」以来、12年ぶりの実写映画。その間は、「ポーラー・エクスプレス」や「Disney’s クリスマス・キャロル」といった、取り込んだ映像をデジタル化する「モーションキャプチャー技術」を用いた映画を作ってきた。12年ぶりの実写映画に今作を選んだのは、「脚本が独特の内容で、読んで考えさせられたし、デンゼルと仕事ができることにもワクワクした」からという。撮影に臨む際には「脚本の中に描かれていることを、最善の形で皆さんにお見せしよう、そのために最善を尽くそうと興奮した」と話す。
その独特の内容の脚本とは、ワシントンさん演じるウィトカー機長が、操縦中に原因不明の急降下を始めた旅客機を、草原に緊急着陸させ、多くの乗客の命を救う。ところが、血中からアルコールが検出されたことから、事態が思わぬ方向に転がっていく……というものだ。急降下を止めるために背面飛行を決行するなど、迫力ある映像が楽しめる一方で、ウィトカーの内面に焦点を当てたヒューマンドラマとしても見応えがある。
ウィトカーを演じたのがワシントンさん。過去に2度、アカデミー賞を受賞しており、今作でも主演男優賞にノミネートされた。やはりオスカー俳優のトム・ハンクスさんとは、これまで数度顔を合わせているゼメキス監督だが、2人の名優について「どちらも用意周到で仕事に臨む。生まれ持った才能があり、真実味を演技によって表現できる役者たち」と評する。その一方で、「よりリラックスして役に臨むトム(ハンクスさん)」に対して、「デンゼルは、役に集中して臨む俳優」だと指摘する。
そのデンゼルさんの演技には「日々感心させられていた」という。特に印象深かったのは、ウィトカーが、ドン・チードルさんふんする弁護士と朝食をとったあと、ホテルのバーで酒を飲む場面。「あのシーンでの、彼のみじめな様子は強烈に覚えている。楽しんで飲んでいるのではなく、本当にみじめさが伝わってきて悲壮感にあふれているんだ。どうしてそんな演技ができるのかと思うぐらい、本当に魔法のような光景だったよ」と、デンゼルさんの演技を絶賛する。
幼少期、テレビでたくさんの映画を見て育った。そのとき「映画に恋をした」。「映画が与える幻想的な部分と、感動を与える感情的な部分に引かれた。その後、一人の人間がマエストロ(巨匠、名指揮者)として作品を作り上げる映画監督というものが存在することを知り、それになりたいと思った。そして、劇作、音楽、演技、撮影、照明、色彩……そういった芸術的なものすべてを取り入れ物語を作り、それを人々に伝えることができる映画という芸術様式を、なんとしても手掛けたいと思ったんだ。私自身、映画が自分に与える影響がとても好きだ。それが、私に監督をやらせる原動力となっているんだ」と、自身の映画監督としての意気込みを熱く語る。
手掛ける作品では「人間味のある感動的なドラマを伝える」ことを第一に考え、それを伝えるために「いまある、最新の技術を使う」ことを信条としている。「それによって、今まで見たことのないもの、現実の生活とは違う、独特のものをみなさんにお届けしたい」と考えている。ちなみに、ゼメキス監督が最も好きな視覚効果は「アップ」。なぜなら、「実生活においてアップはない。あくまでも映画の中でしか存在しないもの」だからだ。
ここ約10年間携わってきたデジタルカメラによる作品では「演技的なことと技術的なことはまったく別に考えるため、カメラをどこに置いてもよかった」ことから、逆に今回は、カメラの効果的な置き位置を瞬時に判断できたという。その意味で、「デジタルシネマでの経験は大いに役立った」と胸を張る。今作では、コンピューターグラフィックス(CG)などの最新の特殊効果技術を駆使し、飛行機の背面飛行や不時着シーンを描いた。しかし決してそれだけの映画ではない。その場面は、ウィトカーがその後さまようことになる心の旅の始まりに過ぎない。見せ場は、彼の心の変遷にこそある。その意味において今作は、ゼメキス監督が唱える「人間味のある感動的なドラマ」と「新しい特殊な技術」を融合させるのに理想的な作品だといえるだろう。映画は1日から全国で公開中。
<プロフィル>
1951年、米イリノイ州生まれ。78年、「抱きしめたい」で映画監督デビュー。85年の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、その年最高の興行成績を上げ、米アカデミー賞脚本賞にノミネートされた。その後、同シリーズで2作(89年、90年)を世に送り出す一方、88年には、実写とアニメーションを融合させた「ロジャー・ラビット」を製作。「永遠に美しく…」(92年)をへて、94年の「フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー賞監督賞を受賞するとともに、トム・ハンクスさんにも主演男優賞をもたらした。00年、再びハンクスさんと組んだ「キャスト・アウェイ」を発表。その後、プロデューサーとして活躍するかたわら、自身の監督作として「ポーラー・エクスプレス」(04年)、「ベオウルフ/呪われし勇者」(07年)、「Disney’sクリスマス・キャロル」(09年)といったモーションキャプチャー作品を製作した。
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