ゆうばり映画祭:「暗闇から手をのばせ」がグランプリなど2冠 「じんじん」が観客賞

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 「第23回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」が2月21~25日に北海道夕張市で開催された。塚本晋也監督が審査委員長を務め、「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八監督らが審査員を務めたオフシアター・コンペティション部門のグランプリは、小泉麻耶さん主演の「暗闇から手をのばせ」に輝いた。同作は、興行関係者とメディア関係者の代表が選考した「シネガー・アワード」とのダブル受賞だった。

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 同作の戸田幸宏監督は「素直にうれしいです。ゆうばりファンタに初めて参加して、本当に温かさを感じました。映画は、制作と観客が一緒に作り上げるものだと改めて感じました。実は昨夜(セレモニー前日の23日)、飲み屋で携帯電話を忘れて今日一日そのことばかり考えていましたが、こんな素晴らしい賞をもらえて、(さっき)携帯も返ってきてよかったです(笑い)」と喜びを語った。

 審査員長の塚本監督は「ノミネートされた10本はどれも力強かった。ただ、個人的には自分の中のぐちゃぐちゃの部分を破綻ぎりぎりに表現した作品を見たかった。典型的な枠にはまらない、そうしたものこそオフシアターだと思うので」とコメント。審査員の吉田監督は「ノミネート作品はどれもバラエティーに富んでいて迷ったが、作り手に話が聞きたい!と感じるかどうかを選考基準にしました」と選考理由を語った。

 なお、グランプリの「暗闇から手をのばせ」は、3月23日からユーロスペース(東京都渋谷区)でレイトショー。8日からBSスカパー!で全国放送される。

 また、審査員特別賞を寒竹ゆり監督が脚本も担当した「ケランハンパン」、北海道知事賞を原田裕司監督が脚本、編集も手がけた「冬のアルパカ」、スカパー!映画チャンネル賞を山口秀矢監督の「樹海のふたり」、「渚」特別賞を原將人監督が脚本・撮影・作曲・編集も担当した「あなたにゐてほしい~Soar~」が受賞した。

 田口清隆監督や女優の神楽坂恵さんらが審査員を務めた「インターナショナル・ショートフィルム・ショウケース部門」は、優秀CG賞を「虹色」(バイイー監督)、優秀アニメ賞を「嫌われ者のラス」(YORIYASU監督)、優秀実写賞を「京太の放課後」(大川五月監督)、審査員特別賞を「伝説の大魔神VSエイリアン」(リー・チャン・マン監督)が受賞した。

 また、最終日に夕張市民のもてなしで「さよならビュッフェ」が開かれ、映画祭に参加したゆうばり市民や一般客が選ぶ「ゆうばりファンタランド大賞」を招待作品部門の「じんじん」(山田大樹監督)が受賞した。山田監督は「夕張を訪れたのも初めてだし、映画監督になってから賞をもらえたのも初めてです! こんなうれしいことはない。皆さんありがとう!!」と喜びのコメントをした。その他、イベント賞は「バナナVSピーチ企画上映」、市民賞は「鬼平外伝 正月四日の客」、人物賞は「じんじん」で主演した大地康雄さんが受賞した。

 今回の 総来場者数は1万2484人。初日が大雪で札幌などからの遠出の客が大幅に減少したことが影響して前年比99.3% (前回の動員は1万2567人)だった。

 審査員の吉田監督が「映画を見た後、他の人と内容について語ったり、会場内にうろうろしている監督に気さくに話を聞いたりできる機会があるのが魅力だと思う」と語るように、同映画祭はいい意味で垣根がなく、映画好きが集まって好きな映画について夜通し語り合うという温かいイベントだった。それは、市民の無償のもてなしによって屋外で焼肉や焼きそばなどが振る舞われ、誰でも参加できる「ストーブパーティー」や、スタッフや取材者、俳優なども大部屋に一緒に泊まる合宿のような雰囲気の宿泊施設にも表れていた。

 審査員長の塚本監督は同映画祭について、「限られた空間で連日映画を見て、映画のことを語り合う。この映画祭はアットホームで夢見心地の楽しいイベント」と語るように、何度でも足を運びたくなる魔力を持った映画祭。お目当ての作品が出品されていなくても一度足を運んでみては?

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