名探偵コナン
#1142「乱歩邸殺人事件(前編)」
11月16日(土)放送分
メディアファクトリーの月刊マンガ誌「月刊コミックフラッパー」で連載している新谷かおるさんの「クリスティ・ロンドンマッシブ」2巻と、環望さんの「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド スレッジ・ハマーの追憶」1巻、「ダイブ イン ザ ヴァンパイア」2巻が23日に同時発売されることを記念して、2人の記念対談が実現。直接会って話すのは約1年ぶりだという新谷さんと環さんだが「作品を読んでいれば半分会っている気になれる」と話を弾ませた。過去にそれぞれ相手のキャラクターを自身の作品に登場させたことのある2人に、異色のコラボレーションのきっかけや、それぞれに縁の深い“吸血鬼”というモチーフへの思いなどを聞いた。(毎日新聞デジタル)
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新谷さんの「クリスティ・ロンドンマッシブ」は、名探偵シャーロック・ホームズのめい・クリスティを主人公に、時におじのホームズと協力し、時に自力で難事件を解決する少女探偵物語「クリスティ・ハイテンション」の6年後を描いた続編。新谷さんは「世界中で一番読まれているシャーロック・ホームズをもとにして、私なりのホームズの世界を描いてみようと思った。クリスティを主人公にしたのは保険です。(熱烈なことで知られる)ホームズファンが怖いから」とちゃめっ気たっぷりに説明。テーマについて「ルパンは全然読んでいないけれど、小学生のころからことあるごとに読んでいたシリーズがホームズなんです。読むと毎回ちょっと違った印象を受けてしまう……」とホームズの魅力を語った。
環さんの「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」シリーズは、ヴァンパイアが日本政府から買い取った東京湾沖の埋め立て地に作った人工都市「ヴァンパイアバンド」を舞台に、ヴァンパイアの女王ミナ・ツェペッシュと、従僕で人狼の少年、鏑木アキラの恋と戦いを描く物語。作品では、テクノロジーを駆使して一定時間太陽の下を歩けたり、人工血液が開発され、人間を襲って血を吸わなくてもいいという新たな吸血鬼像が語られる。子供のころから吸血鬼が登場する物語は大好きだったという環さんは「吸血鬼はいつか描きたいと思っていたが、できるテーマはやり尽くされていたんで、ちょっと変化球でいこうと思った」とコンセプトを語り、「本当は永遠に生きる少女と、彼女の年齢を追い越して成長する男の子の恋愛ものを描きたかっただけなんですけれど」と笑った。
環さんの「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」のミナは、新谷さんの「クリスティ・ハイテンション」2巻のエピソード「THE ADVENTURE OF SUSSEX VAMPIRE」の中の重要なキャラクターとして登場し、瀕死(ひんし)のけがをしたクリスティを、吸血鬼の能力「薔薇の接吻(せっぷん)」で治療している。他のマンガ家のキャラクターが数コマだけ作品に登場するケースはしばしばみられるが、新谷さんと環さんのコラボは本格的で話題を集めた。
異色のコラボが決まった経緯を聞くと、「ちょうどホームズと吸血鬼の話を描いていた時に、たまたま2人で飲み屋で酔っぱらって『よーし、オレのマンガに、(環さんのミナを)出すぞ』となった。ミナ姫とクリスティの年が近かったから、登場したら結構面白いんじゃないかと思った」と新谷さんが笑顔で明かすと、環さんは「『マジっすか、超うれしいっす!』って感じで適当に決まった」とうなずき、「(新谷さんの)『エリア88』とか読んでた小学生のオレに教えてやりたいって喜んでて、酔いがさめてから、『すごい約束したな』って思った。それで本当にマンガにミナ姫が出てきて、『うわっ出ちゃった!』って」と、興奮しながら当時を振り返った。
その後、今度は「クリスティ・ハイテンション」に登場する太った吸血鬼メイドのセキコが、「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」(5巻)に登場した。環さんは「ずっとやりたいと思っていた。本当は番外編で、ミナ姫とクリスティの話を描きたかったんですが、なかなか時間がなかったので、先にセキコを出すことにしたんです」と経緯を語り、「セキコは困りましたね。あの顔は、僕のマンガの他のキャラと絶対合わない。どうしようかと悩んだあげく、美形に描いちゃいました。『やせたんです』という無理やりな設定にして」と苦労も明かした。
今後のコラボについて聞くと、環さんは「ぜひやりたいです。やらせていただきたい」と、熱を込めた。新谷さんも、環さんのキャラクターを登場させたことで設定が変わったといい、「クリスティは不老不死ではないけれど、ほとんど年を取らない。どこかでまた(ミナを)出さないと、その設定を読者が忘れているかも」といい、「ミナ姫は神出鬼没で出てきても構わないんだから、また何らかの形で……。お互いにネタをシェアしています!」と笑いながら語った。
環さんはもちろん、新谷さんもデビュー作「吸血鬼はおいや!?」で描いている“吸血鬼”について、環さんは「ホラーといったら血まみれ血みどろですが、吸血鬼ってスタイリッシュなんです。いつの時代でも最先端のアングラファッションをしている。恐ろしいと同時にかっこいいダークヒーローもの好きはたまらないですね」と夢中で話し、新谷さんも「吸血鬼って、狼男やフランケンシュタインみたいな怪物もののキャラクターで、唯一爵位を持っている。貴族なんですよね。上から目線でいんぎん無礼、でも上品さと威厳を持っている」と、その魅力を語った。
モチーフとしては「不老不死とか、いちいち特徴を説明しなくても、ジャンルとして確立してしまったのが吸血鬼。分かりやすいんですよ。あと、怪物のなかでも、夜しか動けない、十字架に弱い、ニンニクが嫌い、鏡に映らないとか、ほかのキャラに比べて“しばり”が多いのが面白い」と新谷さんが言うと、環さんは「僕の描いている吸血鬼は、人類が知恵を持つ前から存在したという設定なので、キリスト教につながる弱点は存在しない。どちらかというと、死なない人というか死ねない人というイメージ。永遠に死なない命なんて、ろくなことないじゃないという体現者ですね。愛した人がみんな自分を置いて死んでしまうから、吸血鬼って哀れなんです」と自身のコンセプトを説明した。
今までの吸血鬼の物語について、新谷さんが「ヨーロッパの人には不老不死ってすばらしいというイメージがあるからか、吸血鬼が死ねなくなって後悔しているって考え方は、日本にはあったけれど海外ではあんまり描かれなかった」というと、環さんは「(何で吸血鬼が哀れか)海外で質問されたんですが、日本人には諸行無常の発想があるから、永遠に若く美しい吸血鬼は哀れ。『桜は散るから美しいんだ』って説明したら(ヨーロッパの人にも)分かってもらえた」といい、「最近では(映画の)『トワイライト』とかが、悲しい吸血鬼を描くようになってきた」と、独自の見解を語った。
最新巻「クリスティ・ロンドンマッシブ」2巻は、ホームズの宿敵・モリアーティ教授に出会った17歳のクリスティの物語で、新谷さんは「昔はホームズの事務所に『おじさま、おじさま』と出入りしていたクリスティが、今度はモリアーティ教授とからむようになっている。私なりのモリアーティ教授を見せていこうという巻になっています」と紹介。今後の展開については「新しく加わったメイドがらみの話も描きたい。ちょっと風変わりなキャラもいて、動かしがいがありそう」と意気込んだ。
一方の環さんは、本編「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」のサイドストーリーとなるコミック「スレッジ・ハマーの追憶」1巻、「ダイブ イン ザ ヴァンパイア」2巻について、「スレッジ・ハマ−は正しい大人の男性を、ダイブは正しい青少年を描いている」と紹介。特に、スレッジ・ハマ−については「20歳のころに、最初の30ページくらいで挫折したマンガのキャラクターで、やっと日の目を見た。今回は完全に主役になります」と思い入れを明かし、「発展途上の、男としての生きる価値を探すという話が大好きで、スレッジ・ハマーは目指すべき男として描きたい。かっこいいと思ってくれたらうれしい」と、熱っぽく語った。
<新谷かおるさんのプロフィル>
しんたに・かおる 1951年生まれ。72年に「吸血鬼はおいや!?」でデビュー後、「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」の松本零士さんのアシスタントをへて独立。85年に「エリア88」「ふたり鷹」で第30回小学館漫画賞を受賞。現在、「月刊コミックフラッパー」(メディアファクトリー)で、ホームズのめい・クリスティを主役にした「クリスティ・ハイテンション」(06~11年連載)の続編「クリスティ・ロンドンマッシブ」を連載中。
<環望さんのプロフィル>
たまき・のぞむ 1966年生まれ。86年に「少年サンデー大別冊」(小学館)でデビュー。数々の雑誌連載をへて、05年に「月刊コミックフラッパー」(メディアファクトリー)で「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」を連載。10年には同作がアニメ化されて人気を博し、12年に第1部が終了したが、現在、同誌で第2部へとつなぐサイドストーリーとなる「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド スレッジ・ハマーの追憶」を連載中。
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