南イタリアのシチリアから離れた小さな島を舞台にした、哲学的な作品「海と大陸」(エマヌエーレ・クリアレーゼ監督)が6日から岩波ホール(東京都千代田区)ほか全国で順次公開される。真っ青な空と海、まばゆい光の中で人間の良心が問われる。ローマ生まれでシチリアにルーツを持つクリアレーゼ監督がメガホンをとり、実際に海を漂流して生き残った元難民を同役に抜てきした。ベネチア国際映画祭審査員特別賞作品。
ウナギノボリ
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シチリアから遠く離れた、地中海に浮かぶリノーサ島で代々漁師をしてきたプチッロ家。20歳のフィリッポ(フィリッポ・プチッロさん)は2年前に父親を海で亡くして、祖父エルネスト(ミンモ・クティッキオさん)とともに海に出ている。彼は本土でやり直したいと思っている母親と観光業に転じたおじの間で、進むべき道に迷っていた。漁に出たある日、アフリカ難民が海を渡って船に助けを求めてきた。祖父エルネストは難民を船に引き上げる。そして、妊娠中だった難民のサラと息子を自宅のガレージでかくまうことになり、このことがのちに波紋を呼んで……という展開。
この映画は冒頭から難題をふっかけてくる。海を泳いでくるアフリカ難民。漁師であるフィリッポの祖父は「海の掟」に従って人命救助を優先する。尊い行いだが、祖父は不法入国ほう助の罪に問われる。難問にぶつかれば意見はたいてい割れるもの。漁師たちもまた「助ける必要があるのか」と意見が分かれる。漁師の生活が先細りなのに、人助けをしている場合か、と。主人公のフィリッポはまだ若い。その心中は揺れに揺れて葛藤する。小さな島育ちの素朴さを感じさせるその風貌と観光にやって来た同世代の若者との対比が見事で、イタリアの南北格差社会も浮き彫りにしている。小さな島での「観光」と「移民問題」は、はしゃぐ観光客にさんさんと降り注ぐ陽光と、不法移民の母子をかくまった部屋の暗がりとなって、「光」と「影」の強いコントラストを放つ。フィリッポの葛藤とかくまった母子の行く末が、ラストに向けてギリギリするような緊張感となって強烈な印象を残す。6日から岩波ホール(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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