朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第117回 椋鳩十「大造じいさんとガン」

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第117回は椋鳩十の「大造じいさんとガン」だ。

ウナギノボリ

 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 先週の5月10~16日までの間は愛鳥週間・バードウイークでした。1894年にアメリカのチャールズ・バブコックさんが定めた「バードデー」が日本に伝わり、1950年から現在の日程で行われているこのイベントは、「鳥類についての正しい知識と愛護思想の普及」を目的としています。

 大きな公園にお出かけすればさまざまな鳥を目にすることができますし、この時期カメラや双眼鏡を持って歩く方もよく見かけるんですけど、私はちょっと趣向を変えて、「バードカービング」を鑑賞してきました。

 バードカービングは鳥を模した木彫りの彫刻のことなんですが、展示されているどの鳥も本当に生きているかのような出来栄えで、驚きの連続でした。普段遠目でしか観察できないさまざまな野鳥を、近くからじっくり眺めることができるので、皆さんも機会があったら一度鑑賞してみてはいかがでしょうか?

 さて、ここでお誕生日のご紹介です。まず5月12日は、武者小路実篤さん(1885年生まれ)。色紙のイラストに添えられた画賛の言葉「仲良きことは美しき哉」で有名ですね。

 翌5月13日は、平井和正さん(1938年生まれ)。宇宙からの脅威「幻魔」に立ち向かう人類の最終戦争を描いた「幻魔大戦」、不死の力を持つ人狼の戦いを描いた「ウルフガイ」シリーズは、いずれも後の作品に多大な影響を与えました。

 最後に5月15日は、ライマン・フランク・ボームさん(1856年生まれ・アメリカ)。魔法使いを題材にした作品といえば誰もが思い浮かべる代表作「オズの魔法使い」をはじめとする「オズ」シリーズの生みの親として知られています。

 ではここで、朗読倶楽部のお話。今回からは、これまでに何度かお話しさせていただいた「朗読大会」……その出場の記録を、今一度振り返ってみたいと思います。

 朗読倶楽部の結成当時、学校ではクラブ乱立によってクラブハウスが不足してしまったため、クラブの数を整理することが決まっていました。その条件は、「クラブとしての活動実績を出す見込みを、短期間でたてること」。これが満たせないクラブは廃部となってしまうのです。新しく作られた朗読倶楽部もまた、例外ではありませんでした。

 活動実績を示すため、朗読の全国大会にエントリーすることを提案した部長さんと、ひとつだけでは不安なので他の大会も申し込もうとおっしゃる先生によって、朗読倶楽部は本格的な練習をする前から都合五つの大会へ申し込むことに。慌てて練習を始める私たちでしたが、自分なりに成長できたかどうかを実感する前に一つめの大会がやってきました。

 自信のないままに出場した結果は、全員入賞なし。当然と言えば当然の結果でしたが、みんなの励ましもあって、次回はもっとうまく朗読しようという気持ちになれたのです……と、いうところで、今回はここまで。次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 椋鳩十「大造じいさんとガン」

 こんにちは、今回は5月の愛鳥週間にちなんで、椋鳩十(むく・はとじゅう)さんの「大造じいさんとガン」をご紹介します。

 ガンはカモの仲間に属する水鳥で、日本では冬の間に飛来し、暖かくなると北の国へと飛んでいく渡り鳥。小説などで見かける「がん首をそろえて~」という表現も、このガンに由来しているんですよ。

 1941年の月刊誌「少年倶楽部」に掲載されたこのお話では、猟師の大造じいさんと、ガンの残雪による知恵比べが繰り広げられます。学校教科書に採用されているお話なので、読んだことのある方は多いのではないでしょうか?

 猟師の大造じいさんは、毎年沼地にやってくるガンの群れを狙って、狩りを行っていました。 ところが、その群れに「残雪」と呼ばれるガンが混ざるようになってから、狩りの様相は一変します。

 呼び名のとおり翼に雪のような白いまじり毛があるそのガンは、群れを率いるリーダーとなり、猟銃の弾が届く場所に人が近づこうものなら、すぐさま仲間たちを逃がしてしまうのです。

 おかげで残雪が現れてからというもの、大造じいさんはまったくガンを仕留められなくなってしまいました。ここから、大造じいさんと残雪の静かな戦いが始まります。

 大造じいさんが知恵を絞って仕掛けた罠を、次々と打ち破っていく残雪。その賢さには、してやられたはずの大造じいさんさえ、腹をたてるどころか大したものだと感心してしまうほどでした。

 幾度かの知恵比べが繰り広げられた後、大造じいさんはあるアイデアを思いつきます。それは、以前生け捕りにして飼いならしておいたガンを群れに紛れさせ、猟銃の射程に誘導させようというものでした。ところがその時、予想外の出来事が……。

 愛鳥週間なのに狩猟のお話?……という声も聞こえてきそうですが、ぜひ一度このお話を読んでみてください。きっと、大造じいさんと残雪の関係に引き込まれてしまうはずです。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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