新型ゲーム機競争:PS4のライバルはPS3

ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション4」(上)と、マイクロソフトの「Xbox ONE」
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ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション4」(上)と、マイクロソフトの「Xbox ONE」

 世界最大のゲーム展示会「E3」でお披露目されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション4」(PS4)と、マイクロソフト(MS)の「Xbox ONE」。今年の年末商戦を大きくにぎわすであろう両新型ゲーム機が“激突”したE3での第1ラウンドは、PS4が100ドル安い価格設定で優位に立ったというのが関係者の見方だ。だが業界では、「PS4のライバルはXbox ONEではなくPS3」という新型普及に向けた課題を早くも指摘する声が出ている。(毎日新聞デジタル)

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 ◇似たゲーム機

 PS4とXbox ONEは、一般の目線で見ると差が分かりづらいゲーム機だ。両機とも現行機よりも美しい画面でゲームが楽しめ、現在の超高性能PCに近い仕様の機械設計で、ソフトの開発が比較的容易とされる。ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアと連動するなどインターネットへの接続により、多彩なコンテンツも用意される。

 また、データ処理に負荷のかかる計算を別のコンピューターやサーバーにさせる「クラウド」技術を活用する点も同じで、ゲームだけでなくテレビ番組や音楽配信なども意識したのも同様。500GBのハードディスクを搭載し、ブルーレイ・ディスクのドライブを搭載している点も同じだ。

 ◇関係者「ソニー優位」

 決定的な違いは、Xbox ONEにカメラとセンサー、音声認識を活用してハンズフリー(手を使わない)でゲームを動かす機器「キネクト2」が標準で搭載されていることだ。だが価格は499ドル(約4万9000円)。PS4は同様の機能を搭載しておらず、代わりに本体の価格を100ドル安い399ドル(約3万9000円)に設定した。

 SCEは06年、E3で新型PS3の価格を6万2790円と発表しながら、社外の猛反発を受けて4万9980円に修正した苦い経験があり、今回、その反省を生かした形だ。「価格は素晴らしい。非常に頑張ったと思う」(大手ゲーム会社社員)など業界関係者からは好評だ。

 ◇敵は現行機

 だが両機は「ライバル同士ではない」という声も出ている。ゲーム業界に詳しい国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表の小野憲史さんは「新型ゲーム機のライバルは現行機」と語り、ゲームユーザーの間に「(現行機の)PS3またはXbox360で十分」と新型機を敬遠する風潮が定着するのを警戒する。

 現行機の人気が新型機の普及を阻んだ前例として、11年末に発売された携帯ゲーム機「PSVita」の例がある。PSVitaは専用ソフトがなかなかそろわなかったため、ソフトがそろっている旧型機のPSPの人気が持続し、ユーザーの買い替えが今年2月の値下げ発表までうまく進まなかった。PS4もXbox ONEもそれぞれ現行機との互換性がない上、ソフトメーカーの現在の戦略は、どのハードにもソフトを供給するというのが普通。新型機の登場時は新型、旧型ともに対応するケースも出ており、そうなると新型機を買う必要性は薄れる。

 実際、有力ソフトメーカーのコナミデジタルエンタテインメントが人気ゲーム「メタルギア」シリーズの最新作「メタルギアソリッド5」を、PS4とPS3、Xbox ONEとXbox360で供給することを発表している。カプコンは「デッドライジング3」をXbox ONEで出すことを発表したが、「独占供給」という言葉は用いず、今後に含みを持たせている。

 SCEが今回「1年以内に専用タイトルを20本出す」という“公約”も掲げたのはそうした懸念を払拭(ふっしょく)するためだろう。MSとSCEは他社に頼らず、自社開発の人気ソフトを生み出し、さらにゲーム以外のコンテンツやサービスを充実させるなど、新型機のセールスポイントを出す必要がある。むろん、現在売れている現行機との共存をどう図るかを含めて、難しい判断を迫られそうだ。

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