マンガ質問状:「鎌倉ものがたり」 連載30年で作品世界に独自の広がり

西岸良平さんの「鎌倉ものがたり」(双葉社)
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西岸良平さんの「鎌倉ものがたり」(双葉社)

 話題のマンガの魅力を担当編集者が語る「マンガ質問状」。今回は、連載開始から30周年を迎えた西岸良平さんの長寿マンガ「鎌倉ものがたり」です。双葉社「まんがタウン」編集部の佐藤景一さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 古都・鎌倉を舞台に、ハンサムな推理小説家の一色正和が怪事件に挑むミステリーロマンです! ……というのがふだんの回答なのですが、実は、内容を正確に説明するのが難しい作品でもあります。本格推理コミックでもあり、人間心理の機微にホロリとさせられる作品でもあり、また一種のファンタジーでもあり、さらにナンセンスとユーモアにみちた作品でもあります。まずは先入観なしに読んでみてください、と申し上げるのがいいような気がしています。最初はユニークな世界観に面食らうかもしれませんが、読んでいくうちにクセになっていくことは間違いありません。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 30年前の初代担当編集者はすでに定年退職しているので、初期のことはわかりませんが、西岸先生が鎌倉あたりへ引っ越されたのが誕生のきっかけだったと聞いています。ちなみに、初代編集者は、初期の名エピソード「姥ケ谷の麗人」(24話)に登場するキャラクターのモデルで、作中では江ノ電の幽霊(?)に乗って、大正時代へ旅立ってしまいました^^;

 −−編集者として作品を担当して、今だから笑えるけれど当時は大変だった……、もしくはクスッとしたナイショのエピソードを教えてください。

 西岸先生と直接お話しして、作品の内容についてやりとりできる編集者は、小学館の「三丁目の夕日」の方と私しかいないと思いますので、その点では大変やりがいのある仕事ですが、その分責任も重いわけで、毎月原稿をいただきに鎌倉へ行くたび、JR鎌倉駅のプラットホームから見える「鎌倉ものがたり」の巨大な看板を見て、重圧に胸が痛く……いや、身が引き締まる思いがします^^;

 西岸先生はめったにメディアに出てこられないので、それだけに、作品をきちんとファンのみなさんにお届けすることが自分の大切な使命だと思ってます。

 −−今後の展開は?

 30年続くことで、作品世界が独自の広がりを見せていることも「鎌倉ものがたり」の面白さの秘密です。たとえば、初期エピソードで登場した女性刑事が、20年以上たってからレギュラー的な活躍をするようになったり、脇役の知られざる過去や私生活が明らかになっていったりとか、回を追うごとに作品世界が広がっています。先生ご自身もこの作品を「ライフワーク」と呼んでおられるので、30周年を越えて、さらに数多くのエピソードが生まれて、作品世界がいっそう広がっていくことと思います。

 −−読者へ一言お願いします。

 30周年とコミックス30巻の発売を記念して、イベントや関連商品などがあります。まず、小田急百貨店藤沢店では「30周年記念展」(12~18日)が開かれています。入場無料なのでぜひお越しください。鎌倉の名物駅弁「鰺の押寿し(あじのおしずし)」も、期間限定でコラボパッケージが販売されています。新刊発売記念の30周年フェアでは、鳩サブレーや鎌倉サイダーの特製コラボ賞品が抽選で当たりますので、どしどしご応募ください。30周年記念出版の公式ガイドブック「鎌倉ものがたり読本」も充実した内容になっていますので、こちらもよろしくお願いいたします。

 双葉社 まんがタウン編集部 佐藤景一

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